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死刑の国

12/19


絞首刑執行の日。
その日は突然やってきた。
今日もいつもの平日だと思っていたし、会社にいるときも特に何も考えず普段通りの1日を過ごしていた。
食事はいたって質素。いや普通の人に言わせれば暴飲暴食の類になるかもしれないが、朝にご飯とカレーを、昼はポカリスエット、おやつに差し入れのお菓子を食べて夕飯はなし。いつもの、本当にいつもの日常を過ごしてしまった。

刑を執行されると知ったのはついさっきだ。あと2時間と少しで執行される。
今日が執行の日だとおおよそ想像はついていたが、自分が刑を忘れていたことを、綺麗事のようには言いたくない。

闇夜にはすでに執行人が集まっているし、扉の向こうはいつも通りに静かなままだ。
執行人にとってはいつものことだろうし他の罪人たちにとってもこの日はいつもの日なのかもしれないが、オレは死にたくない!!

まだやり残したことがたくさんあるし、明日やることも、明後日やることも、土日に何をするのか、年末年始に何をするのかずっと楽しみにしてきたんだ。
なのに今日、刑が執行されるなんて聞いてない!
忘れてたとか覚えていなかったとかじゃない! 誰も責められないけれどオレは生きたいんだ!

なんで死ななきゃいけない?
オレが何をした?
罪状は「何もしなかった罪」だなんて酷すぎる!

あと2時間。悔いが残らないように祈ることしかできない。
泣いても叫んでも、あの覆面の死刑執行人は誰も許してはくれない。
来世では 何をしよう。どう悔いなくすごそう。行きたい。まだ生きていたい。
でももう目の前に、あの日がやってきている。

どうすればいいんだ。
ああ、過去のオレ、もしこの日記を見ているなら、絶対に後悔しない人生を送ってくれ。
あんな黒塗りの不細工な野郎に、こんな殺され方をするくらいなら、せめて一つだけでも、大切な思い出を作ってやってくれ。
オレはもうダメだ。あと2時間。もう10分も経ってしまった。
朝起きてから二度寝なんかしなくていい。夜帰ってきてツイッターなんかやらなくていい。
いいか。死ぬより怖いことはないぞ。

あああ、何を書けばいいのかわからない。オレはどうすればいい?あと2時間。まだ生きてる。
死にたくない死にたくない。まだこのままでいたい。
こんな人生の独房の中で一生閉じこもって生きていたくなかった。もういちど外を見たかった。
あと2時間。まだあと2時間と9分。

もう少しでオレは死ぬ。
あの頭巾を被った年男に殺される。
もうそろそろ、お別れを言わなきゃいけないかもしれない。

あああ、嫌だ、死にたくない。それでも、生まれ変わらなきゃいけないんだな。
覚悟しよう。来世こそ、きっと真面目に生きよう。

おめでとう誕生日。
さようなら今年のオレ。

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