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夜の世界にはあらゆる国がある。
その中には近未来テクノロジの国がある。
近未来テクノロジの国では、経済は数学式が貨幣制度の代わりとして存在し、あらゆる工房、あらゆる主義主張、考え、思想、その人の持つ能力や特技はすべて「性能」として評価される。
数学がどこの国よりも抜きん出て発達しており、数字と関連方程式が物事のすべてを決める。
良し悪しは性能差で決められ、その評価性能の一つに、速さが求められることが多い。
技術は何者の前においても平等である。
絶対公平とは、この世に存在しない理論値だ。
人は間違い、世界は必ずどちらかへ偏る。それを補い補助し人々を支え助けるのが技術であり、数学であり、振り子のように揺れ動く理想的な未来を追求していくのが人々の役目である。近未来テクノロジの国の工房の人々はそう信じている。
数多ある機械たちが次々と性能評価房、巨大な塀で覆われた模擬戦区画へ運ばれていく。
オレは機械ではなかったが、彼ら試作兵器群たちと一緒に評価試験を受けることになった。
係員は、人間は機械と違って一発勝負になると言った。機械なら、なんの性能評価を受けるかで部品をつけたり外したりできるからだ。でも人間は違う。
壁面に設置されたパネルが青白く光る。
オレはそのパネルを見た。
光るパネルは、オレがパネルを見つめたことをセンサーが検知してすぐに消えた。
大きな壁が消え、無限に広がる薄暗い空間が周囲に映し出される。
オレは手に小さな拳銃のようなものを持っていた。拳銃ではなく、拳銃のような形をしたレーザーガンだ。実際は手に何も持っていないのだろうがこの試験場内ではオレは試験を受けるための武器を持っている。
ふたたび空間上に、今度は二つの光点が映し出されて左右二手に分かれて走る。
手に持ったレーザーガンを好天に向かってかざしトリガーを引くと、光点は消滅した。
打てば消える。
打たなければ光点は消えない。
オレは今日、この評価試験を受けに来たのだ。
では、テストを開始する。
そう耳元で声がしてブザーが鳴った。
あらゆる場所で光が瞬いた。オレは光点を撃ち抜いた。