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夜の世界にも夕暮れがきた。
ずっと真っ暗だった夜の世界に太陽が戻ってきたのは何年振りだろう。年単位で終わるだろうか。月か。それとももっと違う単位?
モンスターたちの巣食う縦穴周辺は相変わらず、背の低い葦の森が永遠に広がる湿地と河原の複合平原だったが、気づけばその中に住居を構えるものが出てきた。
気づけば出てきた。気づいたら、いたのだ。
縦穴の主としてはこんなに嬉しいことはない。
深い縦穴に宝物を置いて、モンスターを置いて、このダンジョンには宝物とモンスターがいるぞ、こにダンジョンは奥が深いぞと周りに触れて回っていたのになかなか人が来ない。それでもう10年以上たった今、やっと人がやってきたのだ。
だがその住人は、まだここにやってきて間もない。見るからにボロくて安っぽい葦の小屋に住んで何もしていない。
もしかしたらただの旅人だろうか。
空を飛ぶあの白いガンやワタリカラスのように、たまたまこの地にやってきて、たまたまここにたどり着いただけなのかもしれない。
モンスターハウスとしては嬉しく思うが、それだけではいけない。緊張感を持って、その住人のことを見届け、歓迎しなければならない。
今まで通りで本当にいいのだろうか。
このモンスターハウスは、あの旅人を満足させられるだけの深さと財宝を用意できているだろうか。
とても不安だ。