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久々のポエム

全速力で時を刻む時計の針が、ぐるぐると回転を続けている。
濃い暗褐色の空。藍色を、もっと濃くしたような色。
育ち盛りのコンクリートジャングルか。あるいは成長を止めてしまった石筍(せきじゅん)か。
一千年の時を隔てて、なお成長するのは1センチほど。

コンクリート・ジャングルには放置自転車がよく似合う。
それも錆びて、色褪せ、誰も乗らないのに誰かを待っているサドルのそれは、透明な持ち主を乗せてずっとその場に立ち尽くしているような。


私も同じ。
ここに立ち尽くして動かなくなった、私も同じ。

この夜の世界を何度見てきたか。
中途半端に白々しい、都会の色褪せた伝統の色を空に写し、暗くもなく、ましてや明るくもなく。
道行く影法師たちが家路につくその姿を、ただぼうと見て立ち尽くす。

腐肉の王はすでに消えた。
腐った木の根元、根に覆われた社、苔むした石像の影。腐肉の王は詩の力と引き換えに、私に呪いを与えた。
腐肉の王は私に夜の世界を教えてくれた。
今はもうその姿は見えない。

今あるのはただ、木の下で曖昧な、笑みとも無感動とも虚無とも取れる顔つきの、大きな猿が、私をただただ見守っている。

見守っている?
見守っているわけではなかろう。
そこにいる。
そこにいるだけだ。
見えないものが見えるようになる世界。
見なくていいものが見えなくなる世界。

見たいものだけが、見える世界。
そんな夜の世界。

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