壁がある。
高くそびえる壁。
我々を脅威から守り、恐怖から目をそらし、耐えて、朽ちて、砂に還りつつある巨大な壁が。
壁の向こうには脅威がいる。
私たちを喰い、飲み込み、吸い尽くし、干からびるまで吸収して、繊維質のクズにしてしまううごめく肉の泥が。
昨日まで話していたあいつが、憎たらしいあいつが、明るいあいつが、うるさかったあいつが、どうでも良いとさえ思っていた影の薄いあいつが、ただの繊維質のカスになって、皆等しく砂に埋もれて死んでいる。
我々は壁に守られてきた。
その壁は、砂にやられて風化しつつあった。
壁に穴があき、ひび割れ、修理も効かないほど壁自体への傷が深くなっている。
我々は今一度、外の脅威について考え直さなければならない。
脅威はないなどと思ってはいけない。死の恐怖はすぐそこまで迫ってきている。
武器をとり、もう一度戦うべきだ。
くだらない言い合いと議論はもううんざりだ。
立ち上がれ。
意志を持つものは武器を取れ。
もう一度、我々の戦いを始めようじゃないか。
諦めと落胆に死を!