白麗シリーズ③は生まれて始めて書く<妖の世界>だが、シリーズお決まりの艶めいた話の挿入としては、妖女・華娘と荘康記、そしておせっかい萬姜さんと呉服商・彩楽堂の2組の絡みを書いている。
むつかしいだろうと想像していた妖女・華嬢と荘康記の絡みは、熟女で妖女の華娘に20歳そこそこの康記が一方的にもてあそばれるだけなので、意外や意外、書きやすかったのだ。
しかしながら、私の大好きなあさのあつこさんの時代劇小説『弥勒シリーズ』に出てくる、遠野屋清之介が10歳ばかり歳を重ねた感じの彩楽堂の主人の描写には、かなり手こずった。
ほんとうの遠野屋清之介は若くして逝った妻一筋で、再婚もしていないし浮いた話の1つもない。しかし、私の書く彩楽堂には三人の妻を持たせてみた。けれども、まったく本心を見せることなく、それでいて相手を思いやる穏やかな物言いをする、優れた商売人であるところは遠野屋清之介も彩楽堂も共通している。
さて、彩楽堂は萬姜さんを4番目の妻とすることができるのか…。
①から登場している萬姜さんには苦労のかけっぱなしなので、白麗シリーズの終わりに、彼女には彼女らしい幸せをつかんで欲しいと思う。