「ブラッドシティー」がまだ未完(どころか話の中心にまだ辿り着けていない)なのに、新しい長編を書いていいものか、と悩みましたが、完全に脳内で出来上がってしまいアウトプットしないわけにはいかず、連載を開始いたしました。この作品は、プロットをつくり、それをベースにしつつ、アドリブをぶちかましてプロットを壊しながら書いています。
「醜雨」は、怪談です。怪談といえば、作品冒頭に記したように、圓朝の怪談噺が有名でいまも語り継がれていますし、いま人気の実話怪談系のお話も、基本は「話芸」です。口伝で伝わりながら変形していく、というのが話芸のよさで、語り手の味を加えつつ工夫していく世界となります。
このため、本作は、口伝の味を出すために、語り口調で表現しています。誰かが語ったお話を、口実筆記して文字化しているというスタイルです。私に語れるぐらいの話芸があれば、YouTubeで実際に語りたいぐらいのものですが……。
予め構成をお伝えしますと、
1、元の話。江戸時代に起きた人柱のお話です。
2、後日談。太平洋戦争末期のお話です。ここでいまも残っているトンネルにつながる2つのルート(作業用の直登ルート、自動車がかろうじて通れる林道)が誕生します。
3、ここからが本題。21世紀の話となります。
長々としたお話ですので、お気軽にお楽しみください。