久しぶりに作品が完結しました。
「底辺かける高さ」は、全25話、4万字足らずの作品です。短編です。当初は主人公の岸田による一人称でしたが、三人称に書き換えました。一人称のまま突っ走ることも可能でした。ただ、物語としてのふくよかさみたいなものを求めて三人称にしました。ほんのちょっと、ふっくらしたかもしれません。
この作品は、「ねこのおやつ」の中の一編として書きはじめた部分にさまざまな要素が噛み合って、思いがけず長くなっていったために、独立した作品としました。
そのため、どことなく、「ねこのおやつ」のテイストを引きずっているはずです。
「ねこのおやつ」は、短編というよりもショートショートで1話完結の短いお話で、おやつ感覚の作品を目指しています。こちらは、そもそも「完結」という概念がないので、今後も、もしかしたら新しいエピソードが追加されるかもしれません。
「ねこのおやつ」と「目次だけの本」も関連があって、どちらも、私自身が不得意と感じてきた領域です。自分には短い作品は向いていないと決めつけてきた「食わず嫌い」を直そうと「ねこのおやつ」に取り組み、そして自分にはタイトルとか見出しといった表現が不得意と感じていたので、それを逆手に取って(?)、いっそうタイトルと目次だけで表現してみようとしたのでした。
「ねこのおやつ」から、思いがけず「底辺かける高さ」が飛び出したおかげで、その先にある新しい作品もいま生まれそうになっています。
新しい作品を産み出すためには、「底辺かける高さ」はきっちりと完結させなければならない。私はそう決めて、コロナウイルスによる自粛と在宅勤務によって少しずつ時間をつくって取り組んでみました。
新しい作品は「ブラッドシティ」。その作品に取り組みつつ、「底辺かける高さ」の最後の部分を書きました。
次作「ブラッドシティ」は、架空の都市を舞台にした作品ですが、新幹線の開業に向けて工事が始まっている時代設定となっています。1960年代前半。ただし、厳密な意味でその時代を描くものではありません。あくまでも、私の作品の中でのことです。
「底辺かける高さ」とはまったく関係のない作品ですが、「底辺かける高さ」を完結させなければ生まれなかった作品であることは確かです。
こうして物語は、一つ終るときに、新たな一つが始まるのでしょう。