カクヨムでこれまで発表してきた作品は、どれも自分にとってははじめての挑戦でした。
『倫々爛々 親友の夫と不倫している女に幸せなんて来るはずがない』は、世の中に氾濫する不倫報道に業を煮やし(?)、不倫をしている女性を主人公にして「いったい不倫のどこが悪い」というスタンスで書きはじめた初の恋愛小説です。
『目次だけの本』は、その名の通り、タイトルと目次しかない作品。これを無理やり作品と言い張る点で初ですね、当然。
『ねこのおやつ』は初の短編・ショートショートでなおかつ不条理なホラー作品。初が多すぎる作品です。オチのない話もあります。
『底辺かける高さ』はその『ねこのおやつ』から派生した中編で、ジャンル不明な作品です。ジャンルはよくわからないけどエンターテイメントしたい、という感覚です。
そして連載を開始した『ブラッドシティ』。これは、最初は「もしも手塚治虫が新しい作品を書くとしたら」を想像することからはじまって、『奇子』の世界に近づいてみたいと思ったのがそもそもです。
思い切って自分の知らない時代を書いてみよう、と思いつつ、そこに『悪童日記』アゴタ・クリストフ著、『地獄の季節』ランボオ著、『泥棒日記』ジャン・ジュネ著といった好きな本の雰囲気を持ち込んでみたい。
さらに横溝正史、松本清張などが活躍していた「昭和」の世界を舞台にしてしてみたい。
なおかつ、シリアスなタイプのスティーヴン・キング的な物語を描きたい。
そんな欲張った考えで構想し、書きはじめました。
はっきりした年代や地名を記していないのは、その方が雰囲気があるからですし、フィクションなので必ずしも正確な時代考証はしていない(正確にやっているところと、あえて無視しているところがあります)からです。
大きな視点としては、ケネディ大統領が就任したアメリカとソ連の冷戦、キューバ危機など、いつでも第三次世界大戦や水爆戦がはじまってもおかしくない状況があります。
スマホもネットもなく、海外旅行も自由ではなく、知らないことがいまの私たちに比べればたくさんあったのに、漠然と21世紀を夢見ていた人たち。
ノスタルジーではなく、そうした構造をいまの私たちは俯瞰できるので、だからこそ描ける世界で登場人物たちに活躍してもらいたい、と思ったのです。
主人公は、俊。小学校三年生です。
彼の一人称で描きます。
冒頭はのんびりした彼の日常。ただし親友が誘拐され殺されます。膝を悪くしてから性格がすっかり変わった兄。初恋の相手、美枝子。その母。
ですが、物語は、このあとどんどん不思議な展開を見せます。
こんな風に物語をぐねぐねさせてもいいんだ、ということをカズオ・イシグロの作品や、オースターなどの作品で学んでしまったので……。
各章のタイトルは、ひらがな5文字で統一しています。これは単なる遊びですが。
「ブラッドシティ」と聞くと、吸血鬼系ではと思われた方には申し訳ないのですが、恐らくいまのところ吸血鬼は登場しません。ただし、吸血鬼みたいな人たちは大勢出てくる予定です。スティーヴン・キング的でも超常現象ではなく、人間による怖さがメインになります。
現実に存在したであろう、人の生き血をすする恐ろしい人たちです。
お楽しみに。