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お待たせしました。9話を公開しました。

 5月初旬に完成どころか、7月7日になってしまいましたが、しかもまだ未完ですが、ともかく完結一歩手前の「第9話」を公開するところまで来ました。

 この作品は書く前からサブタイトルにあるように「親友の夫と不倫している女に幸せなんて来るはずがない」と断言していますが、結末は当然、そうなるだろうとわかっていました。

 ところが、あまりにも長く時間を掛けすぎたこともあって、迷いがこの間にかなり出てきてしまいました。
 たとえば、驚天動地のエンディングであるとか、「実はこうだった」的などんでん返しとか、いくつか考えてしまって……。

 その、いわば「隘路」にはまり込んでは、元に戻るような日々だったとも言えます。

 こういうところにはまり込むと、なかなか出られないことはよくわかっています。わかっていても、はまり込みます。しょうがないですね。

 ですが、本来の自分にようやく戻れたというか。

 ある人にこの作品を説明するときに、「主人公は女性で、親友の夫と不倫していて、なおかつ職場の離婚調停中の男とも関係しているんだけど、話はミステリーでもホラーでもなく、なにも起きない話なのです」と言っていたことを思い出しました。

「なにも起きない」は語弊がありますけど、要するにこの作品の中での現実的なことしか起きない、という意味です。

 私たちの生きている現実と作品の中の現実は違うと思います。それは鏡の中の自分が、自分ではないのとおなじように。
 だからといって、いま流行の写真アプリのように、他人の顔と入れ替わったり、犬の鼻がついたりするところまでは、いかないよ、という話です。

 正直「それじゃ、おもしろくないんじゃないの」と思われるだろうな、と覚悟しています。
 かつての私なら、「もっとおもしろくしよう」と考えたはずで、そのアイデアの一部は冗談めかして、本文の中に随所に「もし……」という感じで入れ込んでいます。

 自分が昔書いていたような作品への反省というか。いまの自分が本気で書けることだけを書こう、と考えたからでもあるのです。
 以前なら「もっとおもしろく」という部分に夢中になれたのですが、いまの自分はそうではありません。
 おもしろさのベクトルが180度違う、ということかもしれません。私としては、いま書いている方向が「一番、おもしろい」と感じているのです。

 いわば、塩瀬の饅頭とか、兎屋のどら焼きみたいに、生クリームもフルーツもないけどおいしい、といったものにいまは心が惹かれているのです。

 完結するはずの10話では、もちろん「なにも起きない」では済まないわけですけども、作品の中の現実としては、それはことさらなにかが起きたわけではないところに落ち着いていくはずです。そもそも、それがこの作品を書く当初からのプランだったからです。

 途中ではまり込んだ隘路については、別の作品(もし書く機会があれば、ですが)で活用すればいいと思っています。ただ、いまのところそれを書きたいとは思わないのです。

 とにかくいまの目標はこの作品をきちんと完結させることです。いまは、そこに集中しております。お楽しみに。

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