なんやかんや締切当日だし、結局一つしか出来なかったし、それも未完成だしで叫びだしたい気分。
もっと時間があれば、などと思うが、時間なんてものはほぼ常に無限に貴様の目の前に存在しているのだ、という正論で自傷している。
ともあれ、まとめ。
ABCDと四つのネタがあって……Cは早々に諦めた。
Dはメイドさん主人公で、「能ある鷹は爪を隠す」系の賢さを描きたかったが、それをストーリーというかたちにまで発展させることが出来なかった。
で、最後まで残ってた現代もののBは、「オタク知識で妹がお兄ちゃんをモテるようにプロデュース(なおゲーム感覚)」という感じだった。
別のノートに「現代ファンタジー」と書いてあるように、当初はそういうゲーム的な、「ループもの」として考えていた。
このループを抜け出すには、お兄ちゃんを完璧にプロデュースして「ハッピーエンド」を迎えるしかない、という。なのでゲーム感覚。
このファンタジー路線を除いて、現代ドラマ路線に舵を切るも、だんだん「賢いってなんだ……」となってきて、断念。
そして唯一投稿までこぎつけたのが、A企画なのであった。
・「シィラの工房」
本当は「シィラのアトリエ」にしたかったが、それであのサブタイトルだといろいろグレーなので工房に。「工房のシィラ」でもよかったかも。あとで変えるかも。
裏テーマみたいなものとして「賢いヒロインを描くために、この子が賢いと見える世界をつくる」という親心めいた神的視点があった。そういう意味でも、この異世界そのものが彼女のアトリエなのである、みたいな。シィラって名前はもともとD企画のメイドさんの名前としてなんとなく考えていた。Aliceをもじったもの。穴に落ちるので。そこから他の「人間」の命名規則も考えていった。
他にも、タイトル回収として、「この世界の全てが彼女の工房なのだ」みたいなカタルシスを目指したいのだが……錬金術っていうのが極論「神になること」を目指しているものであることも踏まえて、なんかいい感じのあれにならないか、とまだもやもやしている。
ゲーム原案のときの「地獄のアトリエ」を下敷きにしているが、残っているのは「引きこもりのヒロイン」と「錬金術でどうにかする」くらいのもの。いちおう、今後の展開としては落ちてくる物資に生き埋めにされないよう、それらを使って状況を打開するアイテムをつくる、みたいなことを構想しているのだが……。
いろいろと、「素材」はよく出来ていると思う。これをうまく料理できれば、そして先日学んだ構成術が日本でも通じるのであれば、一次選考くらいなら突破できるものに仕上がる……そんな自信がある。
ただ問題は、思うように素材をくみ上げられないということ。ぼんやりと浮かんでいる「理想像」は、これがその通りに完成すれば、読者選考のないこのコンテストであれば一次通過くらい出来るかもしれない……そういうもの。だけど、理想を実現するのが難しい。
テーマがあって、それを表現する物語があって。
登場人物がいて、キャラクター性があって、問題があって、それを乗り越えて成長していって。
障害があって、それを乗り越える手段が必要で。
設定があって、それを読者に説明して、その設定を活かして、その設定が上述のテーマと物語とキャラクターにうまくかみ合っている必要があって。
そしてそうやってつくられるストーリーがテンポよく展開され、分かりやすい文章で描かれる必要があって――
そういうのを深く悩まず思うままに実現できるのが才能で、天才なんだろうと実感する。
ぜんぜん思うようにいかない。思い通りに行けば完成度の高いものになる、面白いものになる、そういうイメージがあるだけに、もどかしくてつらい。
それから、時間。もっと余裕があれば完結まで書き終えて、完成度はともかく、見せたいものをぜんぶ描いた状態で審査してもらえるのに、規定文字数ぎりぎりで投稿するのがせいぜいだという、口惜しさ。
いろいろまあ、思うところがあるが、とりあえず本編の話。
今回、珍しくテーマというものを意識したというか、それが明確になっていた。
賢いヒロイン。コンテストの求めるライトなものとは趣旨が異なるかもしれないが……それを補うためのモンスター云々の話もあるのだが……。
真の「かしこさ」とは何かっていうのがテーマになっている。
最初に提示されるのが、物知りで、そのため厭世的なヒロイン。冒険者っていうものを理解できないと毛嫌いしつつ、賢いので、商売相手として対等に接している。
ともすればイヤなヤツだし、それで読者も離れてるっぽいが……。
冒険者を嫌うのにも理由があるし、それが「足が動かない」ことにも繋がって、ヒロインがモンスターに詳しいことにもつながっている……と、いい感じに連動している。
で、そんなヒロインがダンジョンに放り込まれ、自分の知識が通用しない、技術が意味を持たないという絶望。それなのに、普段のような賢さを要求される。助けてドラえもん、という感じ。まあ求める側は冷静な大人なので、そこまで無力感を味わうこともないという親切設計。
これが超人的、つまりチートな主人公であれば突然の窮地にも冷静に対応するのだろうが、こっちは頭は良くても普通の人間なので戸惑うし混乱するし、すぐには本領を発揮できない。構成術でいうリアクションのフェーズである。
それから、生き残るために毛嫌いしていた冒険者を頼らねばならず、見下していた冒険者には彼らなりの生き抜くすべがあって……と、異なる価値観の存在を共感まではしなくとも、受け入れて共存していく。
ヒロインの価値を担保していた、期待されてた技術自体は万全に機能しなくても、持ち前の賢さと知恵はちゃんと状況を打開する役に立っていく……。
と、そういうのが「真のかしこさ」なのでは――という感じで、そのテーマを指針にして物語を組み立てている。
テーマと構成を意識したそういう荒すぎるあらすじは早い段階からはっきりしていたのだが、それを実際の物語として表現するのに超難航した。
ダンジョンの地形もそうだし、錬精術もそうだし、具体的にどういうトラブルがあって、それをどうやって乗り越えるのか、という点。
なので、現在の投稿ぶんより先に関して、まだ具体的なストーリーが出来ていないのである。それが口惜しさ。
ただ、それ以外の部分……世界観だったり事件だったりはストーリーとは別にいろいろブレイクスルーがあったりと、楽しく創作できたと思う。アイディアが溢れて止まらない、みたいな瞬間があったりした。たぶん人生でいちばん興奮する瞬間ってそういうとき。自分の場合。
何かと思い付きが運よく運んでいる感じで……投稿用のあらすじを考えているときに街の名前が必要になって、なんとなく浮かんだ「ソクラテス」という名前を調べ(錬金術関係でギリシャ云々を調べていた影響かもしれない)、その哲学思想やらなにやらから都市の「加護」に関する設定が生まれたり。冒険者の思想とか、いろいろ。
主人公が穴に落ちて、そこで状況を自分で推察していく、というより、先客がいたらどうだろう、その人からまとまった情報を教えてもらう方がスムーズに話が運ぶ。人間だとあれなので獣人だったら、というところからオネエ口調の獣人というキャラが生まれたし、獣人がヒトとして一般的な世界という設定も生まれた。人間と亜人という表現を使った叙述トリックとかも出来たらよかったな、と思う部分ではある。ミステリーはお呼びでないよ、というコンテストだからこそ、そういう要素を付け足したいというひねくれものである。
モンスターの名前を考えていて浮かんだ「アルラウネ」をきっかけにというか、もともとイメージしていた「モンスターの実験場」の設定とそれがうまくかみ合って、設定膨らむきっかけになったり。アルラウネことマンドラゴラって錬金術にも関係しているらしいし、ちょうどよいモチーフを見つけた、という感じ。
モンスターの実験場……話の本筋とは関係ないのだが、裏ではこういうことが起きていると見せるために3話ラストで主人公が目撃しているが、モンスター側の目線に立ったら、もっと人の立ち入らない奥地まで人間を運んで、そこで実験してる方が理に適っているのでは……とか、まあ多少の葛藤があったりもした。
女性は魔力を確保するエネルギー源にするため結晶化、鉱物のインクルージョンにして、男性はモンスターを繁殖させるための種馬にされている、の図だったりする、あれ。
ともあれ、いったんここで打ち止め。
5万字を想定して、その25%地点の1万2千字くらいのところではダンジョン入りしたいと思っていたのだがうまくいかず、構成術っていうのが難しいことを強く実感した。
ただ、10万字の物語であると仮定すれば、今の展開が構成術的にはうまくハマっているような気もする。
これはもう、もともとのストーリーの構想に問題があったのだと思う。というかまあ、中編より長編的な設定量になってるせいか。悪いクセ。でも設定がなければストーリーも思いつかなんだ……。
しかし10万字いくほどのストーリーは用意してないというか思いついてないから、せいぜいが6~8万字にはなると思われ。構成術的にはバランスの悪い失敗作になるし、他のコンテストに再利用も出来ないので、改めて10万字目安のストーリーを考え直すつもり。
……まあいちおう2万字は達成してるので、賢いヒロインコンテストにはエントリーできているわけだが。
それから、頑張れば1日1万字は書ける、という自分の見積もりは下方修正すべきだと胸に刻む。今後は「頑張って3千字書ければよい方」だと思ってスケジュール管理をします。
そんなこんなで反省点ばかりなのだが……。
話変わって。
先日、「CCさくらクリアカード編」が12巻ぶんくらい無料公開されていて、比較的直近に「ツバサ・ホリック」両シリーズを読んでいた自分は歓喜していた。
ノートでは小説の感想しか書いてないが、ちょこちょこ漫画も読んでいるのである。
ツバサは以前読破していたのだが、ホリックが全巻集まったので(本屋になかった)、その機会に改めて読み直し……そしてホリックを読んで……というのが、昨年から今年にかけて、裏でちょこちょこ行われていたこと。
そうやって改めて読むと、ツバサにもまた構成術というものは活きているように思う。というか、すげえ考えられてつくられていることを実感した。
全26巻くらいなのだが、その半分を差し掛かったあたりに「東京編」という明確なターニングポイントがあったりして。
ホリックは……どうなるんだろう。なんか連載再開みたいな話を聞いたが。現在の最新刊の感想はといえば「なんか悲しい」の一言になる。寂しさというか。
で、クリアカード編だが、こちらも恐らくだけども……15巻で完結らしいけど、最初からそれを想定してつくられてる気がする。
普段ジャンプ作品を読んでる自分からすると、純粋に驚きのある発見。連載の性質そのものが違うんだと思う。まあ連載雑誌自体の読者層そのものが違うわけだけども。
なんかもう、上述のように構成に苦しんでる自分からすると、尊敬を超えて崇拝すらしてしまいそうな感じ。
単純なストーリーの展開に限らず、テーマ的な部分、メタ的というか、ツバサを意識してるような部分もいろいろ絡んでて。いや絶対これはツバサの二人のオマージュというかなんというかなシーンだろ、と思う部分がちらほら。オマージュとかパロディとか、そういう言葉で言い表せないような奥深さがある。世界観とか設定とか的な意味で。
上述のB企画で「主人公と同じ顔をした他人」の存在を出そうと思ってたのもあり、クリアカード編の展開は何かと参考になったというか、まあ結果的に何も実現してないのだが……。
なんというかね、自分と似た雰囲気の他人が、だんだん自分の居場所を侵食していく……みたいな展開。もっと読者層が上の少女漫画だと、すごくエグいものになっていくと思うのだが、そこを独特のタッチで、エグくはなく、しかしどことなく「もやっ」とするような、程よい感じで表現してて。
主人公の兄だから、友人がそれを見かけて、「あ、お兄様」って呼ぶシーン。それ自体はなんでもないんだけど、「妹として兄を呼んだ」みたいな……自分の居場所にいつの間にか「自分に似た他人」が入り込んでくるというか、なんというか。
植物園かどこかにデートに行く回だったはずなので、それを読んでもらえれば絶対伝わると思う。この回がやたらと記憶に焼き付いている。
うまく言い表せないのだが、ともかくそんな描き方によってはエグくなるようなものも、うまく扱っていて、それがテーマとか設定とかにも紐づいてるっていう、もう高次元の構成がなされているな、と衝撃を受けた話。
そういう「超理想形」に触れていたお陰で、意識が高くあれたというか、「なんかすごいものが書けそうな感覚」を得られたので、このノートにまとめておこうと思ったのである。
あとはそのイメージを現実にアウトプット出来れば……。
ひとが賢いヒロインと戦ってる間にも、どんどん新しいコンテストの情報が発表されていて、勝手にそのタスクに押しつぶされそうになっているのだが……なんにしても、少しずつクリアしていくしかない。
次はデスゲームか児童向けのやつか……。
デスゲームは「角川ホラー文庫」のものだと応募開始されてから知ったので、それまでぼんやり考えていたネタとは別に考える必要がありそう。
児童向けのやつは、その対象に中学生を含むというのに多少の驚き。自分のイメージだと小学生が「児童」で、中学生からは「生徒」とか言われるものと……。
それから、募集内容が少女漫画的であったりウェブ小説的なものであったりしたのがカルチャーショック。ジェネレーションギャップともいえるかも。「児童小説」と聞いて真っ先に思い浮かんだファンタジーとはぜんぜん違う募集内容だったので。
コンテスト自体としては、「長編の種になる短編」というまた珍しいタイプだし、長編化した際のプロットも求められているという……。これは他の人の投稿を見てから考えていこうかなと思っている。プロットの書式とかもそうだし、長編のプロローグになる短編なのか、長編のいいとこどりしたダイジェストみたいなやつなのかとか、短編の内容自体もいまいちよく分からない。
個人的に「いいな」と思ったのは、応募要項のなかに「あらすじ部分にネタバレ注意って入れていいよ」と明記されているというか、最初から設定されてる点。
pixivの百合文芸も「このあらすじはネタバレを含みます、といれてもいいですが……」みたいな注釈こそあったものの、あんまり良い印象は受けなかったというか、なんというか。ネタバレを含むあらすじが書かれてたら、それだけ読んで本編読まない人は一定数いるはずで。その点、うまく言えないが、このコンテストは性質が違ってていいよね、という感想。ネタバレを含むあらすじこそあるが、それが本編の価値を損ねないというか、なんというか。まあ、パッと受けた第一印象の話です。
ともあれ……こんなクソ長いものを書いてる余裕があれば作品本編書けたんじゃないの? とは思いつつも、それとこれとはまた別腹みたいなやつなんじゃよ、と言い訳しつつ。
今度はちゃんと、もっともっと良いものを書いてやる、という決意表明。
……それを読者選考がない今回実現できなかったのが大変もどかしいのだが!
フォローだとか自主企画とか他ユーザーとの交流がなくても面白さだけで読者選考をぶち抜けるものを書きたい。