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個人的な読書日記

 情緒がめちゃくちゃにされる、という体験とはまさにこのことだと思う経験をしちゃって、誰かに話を聞いてもらいたいがそういう相手もいないので――最近、近況ノートを使い始めてしまったために、この場にいろいろ書こうと思い立った午後23時。

 多少のネタバレは含むかもしれないが、内容自体には触れないよう細心の注意をしつつ、溢れる衝動のままに。

 森博嗣先生の「Χの悲劇」という本を読んだのです。
 Gシリーズというシリーズで、自分は大昔に……比較的近所にあった行きつけの本屋がまだ存在していた頃、まだ店舗が縮小していなかった頃(今はもうない……)、平積みされてるその表紙とタイトルを見て、気になっていた作品。新書サイズで二冊、文庫版を一冊買っていた(シリーズの1、2、3)。
 最初の二冊を読んだっきりなんだかんだで止まっていて、この数年ぼちぼち続刊を買い集めていたのだが、今年ごろから一から読み始めた次第。

 で、つい一時間程前に読み終えたのはそのGシリーズの「後期三部作」の一作目。本の紹介に「後期三部作」と書かれていて、二作目まで出ているのだがそれっきり音沙汰がなく、割と毎月講談社のサイトを覗いてチェックしていたり。
 先月くらいに「オメガ城の惨劇」という新刊が出ると知ったのだが、これは後期三部作の三作目なのか、それとも別口かと疑問を覚えたりもしたのだが、ともあれそれきっかけで今回の「後期三部作」に手を出した。

 若干話はそれるが、別の本で「Xの悲劇」「Yの悲劇」(エックスとワイ)という作品の存在を知り、それらと森先生の関係も知ったので、件の「Χ(カイ)の悲劇」はそのオマージュかなと思っていた。続く二作目もそんな感じのタイトルなので。
 なら三作目は「Z」? きれいなパターンをつくるならそうなりそうだが、「オメガ城の惨劇」という新作が出た。このGシリーズはギリシャ文字に関連してるので、「Z」の代わりとして、予想を裏切りつつもパターンを崩さない……序破急って感じがして絶妙だな、と感じたりしたのでした。エヴァの序・破・Qみたいな。

 閑話休題。
 で、Χ。
 シリーズの前作くらいから作中時間がけっこう進んでいたから、本作もまただいぶ未来……というかもうSFなのではという違和感を覚えつつ半分まで読み……。
 最後の最後、ほんと最後の一文でそれまでの違和感に納得したし、読み返してみるとなるほどと納得できる点があったのだが……まあ、情緒をかき乱されたのはそちらではない。確かに主人公の忘れっぽさとかが腑に落ちたりはしたのだが。

 エピローグになって、正体不明の人物の本名が明かされて、そこで一驚き。ドイツ人? カレー? とか、書かれてもないことが気になってきた。
 それから、ではあの人物も既存の登場人物なのか? ……というか――と思い至っての、情緒ぐちゃぐちゃ。金? 山吹色のお菓子ってことなのか? と……。もし二人が知り合いだったなら、あのシーンの重さも変わってくるぞ……という、「読者が勝手に想像して悶々としている状態」になった、という話です。

 読んでるこちらからすると「初対面」だと思われたある二人のやりとりが、エピローグを読むとかなり印象が違ってくることに気付き、いろいろとこみあげてくるものがあったのです。泣いてはいないけど、最近の自分はやたら感傷的というか、涙もろいのかもしれない。なんか、不思議な気分になったのです。
 ぱらぱらとその二人の登場するシーンを見返してみると、きちんと伏線は張られていたというか、もうまんま答えが書いてあって、「はあ……」と大きなため息が出た。感嘆、というやつかもしれない。本作は一応ミステリなんですが、メインとなる殺人事件とは別の、それ以外の驚きというか、これも一つの叙述トリックなのだろうか、とかとか思ったり。たぶん、間隔を置かずにシリーズを一から読んでたら気付ける人は気付けるのかもしれない。自分が鈍感なだけかも。今のところこのGシリーズしか読んでないのもあって、ふわふわしていた部分もある(過去の別の作品群と世界観が繋がっているので)。


 何も明言されてないのに、自分が勝手に想像してこんなにも動揺した……という、体験。こういうの、書きたいなぁって。忘れがたい読書体験。
 ただ、上述の二人目の人物の方。これは作中で明言されてないのでこちらの憶測……引っかかる部分もあるから、ちょっと既刊を読み返してみようと思う。それから、続きの「後期三部作」の二作目を読もうかな、と思っている。

 いやあ……異世界ものを読んで異世界知識をつける期間になるはずだったのだが……。まあ、面白いものには逆らえない……。

 あんまりこういう個人的なあれを残したくない人間なので、文章にして整理したからにはあっさりこのノートも消すかもしれない。消えてても変に思わないでね。

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