リテイカーの始まりにして終わりの大地、ポイントαは比較的平坦な土地だが、丘陵が点在しているため傾斜や視界に気をつけなければ行けない場所だ。
なんでもここは星の魔力が湧き出るポイント――クロスポットが比較的地表に近いらしく、そういう場所には自然と魔含獣(オルス)がやってくる。
という説明をヴァイスにすると、彼は首を傾げた。
「それならもう魔力の収集装置でもどっかり置いて吸い取ってしまえば良いんじゃないですかね?」
「その装置を設置、維持、管理するよりも勝手に魔力を回収してくれる魔含獣を人権ゼロのリテイカーに狩らせた方が圧倒的にコスパがいいらしい」
「えぇ……まぁそうなのかもしれませんけど」
ヴァイスはドン引きしているが、自分がその人権ゼロ側なことを理解しているのだろうか。
「まぁいい。X-1に弾は装填したか? 安全装置は外しても良いが俺に目がけて撃つなよ」
「しませんよ! にしてもこれがアサルトガンシリーズの開祖、X-1……まさか未だに使われてるだなんて」
「X-1からX-5まではアタッチメントの違いがある程度で基礎パーツは使い回しだからな。あと……」
「あと?」
「無駄に頑丈だからリテイカーがくたばっても銃だけ無事に回収されることが多くて未だに中古がダブついてる」
「え゛。じゃあこれ……」
ヴァイスは自分の持つ銃を見て顔を青くする。
そう、彼のX-1も前の持ち主がくたばり続けて戦場と拠点を行ったり来たりする中古品である。そもそもX-1はもう新品の生産は行っていない筈だ。それでもポイントαの魔含獣を殺すには十分な精度と威力があるのである意味では名器と言える。
「にしてもお前、リテイカーになりたてなのに随分銃に詳しいな。この武器は楽園内部(インナー)では知られてなかったと思うが」
「そそそ、それは! その! 家柄ですか!?」
「俺に聞くな。ったく、探られたくない腹があるならちゃんと隠しとけよ」
「はい、すいましぇん……」
しゅんと落ち込むヴァイス。
この男、かなり変な奴である。
「さてと。遊んでる間に音を聞きつけて獲物がやってきたな」
シュバルトが腕のレーダーを確認しながら呟くと、ヴァイスは慌てて銃を構えながら周囲を警戒する。シュバルトも自前の銃――X-8を構えてレーダーの方向を警戒した。
すると、荒れた大地を蹴って砂埃を立てながら、ライオンの化物みたいな毒々しい紫色の獣が現れた。最もよく見かける魔含獣――通称『レオー』だ。
「うっ、撃っていいですか!!」
「待て。俺が手本を見せる」
焦るヴァイスを手で遮り、シュバルトはX-8で相手によく狙いを定める。
『レオー』はそれを見て即座に射線から離れるが、シュバルトは離れる為に焦って姿勢を変えるその瞬間を待っていた。
タタタン、と、トリプルタップで放たれた弾丸が『レオー』の足に命中する。
『ギャンッ』
バランスを崩して地面に叩き付けられたレオーが悲鳴を上げながら立ち上がろうと藻掻くが、その隙にシュバルトは更に三発をレオーの腹部に発砲。そして充分に近づくと同時に頭部に三発の弾丸を放つ。
これがシュバルトにとっての対レオー必勝パターンだ。
「レオー相手には姿勢を崩し、抵抗の余力を削り、急所を撃つ。この三工程が確実だ。上手いやつは一発で頭ぶちぬいたりする訳だが、かっこつけた時に限ってミスって死ぬのがリテイカーだからな。最初は無駄弾は気にせず三工程だけ頭と体に叩き込め」
「……こんなに呆気ないんですか、魔含獣との戦いは」
どうやらヴァイスの想像していたものとはかなり違ったようだが、リテイカーに英雄的な戦いというのは基本ないので頷く。
「ポイントαじゃ大体こんなもんだ。ちなみにレオーは雑魚とはいえパワーは俺たちが素手で及ぶ相手じゃねえ。接近を許せば呆気なく死ぬのはこっちだから、そこんとこ覚えとけよ」
貴重な忠告をしておくと、真面目なヴァイスは生唾を飲込んでこくこく頷いた。
実際問題、レオーは長く人間に狩られてきた為か射線を避けるのが習性化してきている。
このことを知らずに初撃を回避されてパニックになったリテイカーの末路は、惨いものだ。誰かが教えてやれば死なずに済むのだが、死んだ後のリテイカーの持つ装備品を剥ぎ取って持ち帰ると小遣いになるので誰も教えない。
つまり、ここはそういう最低な場所なのである。