魔法が極度に発達した世界があった。
しかし、あるとき世界は魔力の大量消費によって終末を迎えた。
作物は育たず、生物は弱り、雨は大地を腐らせ、人類は壮絶な環境変化に適応できず次々に命を落としていった。
人だけではなく、魔物も、動物も、植物も、世界にいたありとあらゆる生物が滅亡していった。誰もが嘆き、悔やみ、絶望の中で朽ち果てていく中――救世主は、世界に舞い降りた。
彼の者は神の遺物としか思えない装置で起こした奇蹟により、生き残った人々の最後の楽園(エデン)を築き上げた。楽園で彼の者より人々は教えを受け、やがてその直弟子たちが楽園に落ち延びた人々の為の秩序を築いた。
世界は、辛うじて終末を遅らせることに成功した。
それから数百年が経過した現在――人は楽園を出て、新たな世界を築こうとしていた。ただし、それは到底希望とは呼べないものだった。
楽園内で養えなくなった人間の口減らし――楽園追放(アザーヘヴン)。
楽園内で能力が低い者、危険思想を持つ者、犯罪者は容赦なく楽園を追い出される。ただし、楽園は追放者に一つの職業を押しつけ、その結果如何で再起の機会を得ることが出来た。
第二楽園計画――第二の人の拠点の建造計画だ。
目的はただ一つ。
魔力の収集である。
楽園上層部は、完全に枯渇したかに思われた魔力が僅かずつ再生されていることに気付いた。そして、低魔力世界に適応した生物がその僅かな魔力を食い尽くそうとしていることを調査により突き止めていた。
生物は、周囲から吸い尽くした魔力を己の体内に生成した特殊な鉱石に溜め込み、生存の為に使用する。故に上層部はこの生物に『魔含獣(オルス)』と命名し、この生物を地上から根絶しない限り荒れ果てた大地の再生は不可能と結論づけた。
楽園を追放された者達が生き残る術はただ一つ。
魔含獣(オルス)を殺し、体内の魔鉱石を一つでも多く持ち帰ること。
人は彼らをリテイカーと呼んだ。
…眠いのでここまで。