「はつ恋」と「追憶」は少年時代に過ごした新潟の思い出をもとに作った小説です。その頃はまだ裏日本と言う言い方があって、日本海側の地方は「裏」扱いだったのですが、新潟での思い出は素敵なものしか残っていません。
冬になると雪の日が続いて子供の背丈ほど積もるのに絶対に鉄道は止まらなかった記憶があります。大きな氷柱の生えている駅の軒先を見つつ「なんで止まらないの」と思いながら通学する厳しさはありましたが、それ以上に素晴らしいものがたくさんありました。
砂浜を散歩していると、そこここで浜焼きという、規格外の魚を炭火で炙って食べさせるところがあって、小さなカレイとかを食べるとホクホクの白身が美味しい、あんな美味しいものはなかなかありませんでした。
水も美味しくて、東京に来た時は本当に水道水はしばらく飲めないほどまずかった記憶があります。大人なら酒だったのでしょうが、残念ながらまだ酒を飲む年ではありませんでした。
あとは女の子がとてもきれいでした。小学校の女の子の半分くらいは美人さんで、世の中ってそういうものだと勘違いしていました。東京に来た時はちょっと?と思いましたが、東京の女の子は歳を経るにしたがって、奇麗になるものですね。人の目とか化粧とかで女性は驚くほど変わっていくものです。とはいえ、一度取材を兼ねて新潟に行った時、越後線で見た中学生か高校生の女の子たちはやっぱり素敵に美人さんで、はつ恋に出てくる斎藤さんもそんな美人さんの一人でした。