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自民党総裁選はやはり面白かった 年寄りの戯言 番外編

 自民党総裁選が終わった。先だって「ちょっと面白い」と書いたその戦いは、いろいろな意味で意外な結果になったし、中身も面白かった。
 まず、意外だったのは一回目の投票で高市早苗氏がトップに立ったことだ。今回の総裁選挙は9人の候補が立ったが、その中で「自由民主」というより「保守」というべき候補は高市氏と小林氏の2名であり、残りの7名に票が分散したとはいえ、党員投票で高市氏がトップに立ったのは意外であった。
 この要因は意外なところにあるのではないだろうか、と僕は思っている。
 もちろん、小泉進次郎氏が自らの失言とそれをしつこく、かつ面白おかしく追求する「勢力」によって失速したという背景はあるとして、実際には「北京市における小学校児童の殺人者」と「それを隠蔽する中国政府」が高市派にもっとも貢献したと見立てる。特に党員投票では最大に貢献した。
 この事件は「対中国鷹派」にもの凄いアドバンテージを与えた。都市部で伸びた党員の高市票はこれを反映している。「中国危険視」が「強硬政策」に見える高市票に繋がるというのは表層的な反応でしかないが、今の日本はそういう状況である。相も変わらず愚かな「事大主義」の国家はそのやり口が周辺国家の顰蹙と嫌悪を招く、という事に全く気づいていないようだ。
 そして二回目の決選投票の敗因は「麻生派の取り込みに成功した」という「結果が反面する成功」だった。一回目の投票で「高下駄」を履かされた高市-麻生連合は(おそらく)敗北するべくして敗北したのだ。しかし、有利に進めていた高市氏に雪崩れる可能性もあったので「必然的」ではなく、もしも一回目と二回目の投票が同日に行われなかったとしたら違う結果になったかもしれない。麻生氏の総裁選日間際の露骨な行動はそれほど強い反発を受けたのだ。
 この敗北の度合いは高市氏より麻生氏にとってのダメージの方がよほど大きいというのが実情であろう。少なくとも当面の間、麻生派の議員は冷や飯を食うことになる、それどころか本来麻生派であった、河野太郎は少なくとも内心離反するであろう。高市氏は一回目の投票で一位になったという実績を確保したが、麻生氏には何も残らなかった。ただの負け犬である。
 一見高市潰しに見えるこの投票行動は実際の所はキングメーカーを気取った麻生潰しであった。岸田派や二階派の行動も「派閥的」と捉えるマスコミもいるが、グループ行動を派閥と言い切るのは間違っており、資金や票、ポジションの配分を組織だって行うかどうかをきちんと見極めてからそういう批判をすべきであろう。
 ただ日本全体として見た場合、「高市総裁」が誕生すれば「野田立憲民主」との戦いで自民党が負ける事もあり得たので、その意味では「ひりひりする衆議院選」が実現しなかったのは少しく残念な気もしないではない。僕は立憲民主党を応援するわけではないが、どうも自由民主党のこのところの様子をみていると、一度下野して、宗教問題や裏金の問題のけじめをつけるところからやり直すべきだと思っていた。その意味では自民党は良いチャンスを失ったのかも知れない。
 さて今後、高市氏には党の重要な役職ないしは大臣職が提示されるだろうが、ぜひ蹴って、「保守党」を立ち上げて欲しい。そもそも自民党保守派は党の名前である「自由・民主」よりも優先する「価値観」が存在するので「自由・民主」と名乗ることに抵抗があるはずだし、国民の方から刷れば「自由・民主」というより優先する「価値観」をもつ人々が「自由民主」を名乗ることは違和感しかない。
 そうすることによって憲法改正や男女別姓問題など、なんだか肝心なところで「同じ党と思えない行動」をしている党の主張を整理できると思う。今の自由民主党は、「リーディングパーティになりたい人々が集まっている烏合の衆」にしか見えないが、石破-高市決戦になった事でその枠組みが見えたことは評価して良いのだろう。
 その上で、対外政策やら憲法改正、宗教問題、男女別姓など、是々非々で議論すれば良い話である。
 そういう事実が浮き彫りになったという意味で、今回の選挙は結果的に面白い選挙だったし、当面、展開を期待しながらみることができそうである。

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