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『御徒町カグヤナイツ』あとがき&レビュ返

 公式連載『御徒町カグヤナイツ』が完結しました。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885282129

 いや、キツかった。もちろんある程度ストック溜めてから始めていますし、過去実績的にはそこまでハイペースってわけでもないし、兼業作家やるならこれぐらい書けなきゃ程度の分量ではあるんですけど、本業の方が唐突に残業規制に引っかかるぐらい忙しくなるのは全く計算に入ってませんでした。個人の周辺状況の問題だから誰にも伝わらないけどあの状況で失踪しなかったのを褒めてもらいたい。まあ〆切伸ばしてもらってるんで、間に合ってはいないんですけど……

 さていつも作品完結後はあとがきを書いているので今回も書きたいと思うのですが、今回はせっかく「キャラクター小説」を書いたのでキャラクターについて語りたいと思います。語るのは騎士団と姫のメイン五人。漫画の作者がコミックスでキャラクター制作秘話とか語ることあるじゃないですか。あれ、好きなんですよ。なのでやってみたいと思った次第です。逆にあれ嫌いな人はここから先は読まない方がいいと思うので、ブラウザバックを推奨します。

 まずは主人公にしてカグヤナイツ騎士団長、戦士ヒロト

 この子のコンセプトは「自覚のある中二病」。作中でとある人物が言及しましたが、生まれた時からインターネットに触れて育ってきた今時の子は自分を客観視する能力が明らかに高いです。邪気眼とか嘲笑の対象だと分かっているからそうそう発動しない。「空気の読める子」が多くなっているわけです。

 でも邪気眼発動しなくなった中学生が中二病に罹患しなくなったかというと、そんなことはないと思うんですね。「カッコいいもの」に憧れる気持ちは変わらず強いはず。そういう時代背景を受け、自分が中二病を発症していることに気づきながらも「いいじゃねえか中学生だし」とAKY(あえて空気読まない)で突っ走るのがこのヒロトです。

 正直、難しかった。視点人物ゆえに要求されるフラットさや「戦士」というポジションの曖昧さもあって、主人公のくせに騎士団の中では一番書きづらかったです。ただ連載を終えて思うのは、その書きづらさは「人間」だからなんですよね。人間を書くならばひたすら属性を押し出し続けて「はい、おしまい」というわけにはいかない。キャラクター性と人間性の両立という面で、書いていて勉強になったキャラでした。

 続けてカグヤナイツの用心棒、武闘家ケイゴ
 
 僕の中で一番「伸びた」キャラです。書く前はバックボーンがかなり特殊なのでそっち方面でキャラ立つかなと思っていたのですが、それとは別のところでキャラが立ちました。設定とは異なる個性を獲得できた。作中の役割も含め、本作の重要テーマである「成長」を最も強く体現しているキャラでした。

 話が進むにつれて知らない顔が出てくるので書いていて楽しかったです。第二章が『武闘家の詩』なのでメイン回を早々に消費してしまっているのですが、むしろその後の方が光っていたと思います。そういえばランニングや筋トレで身体を鍛えるのが好きという設定があったのですが、出し忘れていたことを今思い出しました。勿体ない。

 三人目はカグヤナイツの頭脳、魔法使いソン。

 僕の作風というか作家性をご存知の方なら想像つくと思いますが、文句なしに一番書きやすかったです。カノホモの純くんと似てるんですよね。傍目には分からないマイノリティ要素を抱えた理屈っぽい少年。ただ純くんを語るのに欠かせないマイノリティである自分への嫌悪がこの子にはないので、純くんよりはずっとカラッとしています。

 この子のメイン回である『魔法使いの詩』は担当編集さんにこの作品で一番僕らしいと言われました。実際、僕もそうだと感じます。「3-4」とかすらすら書けてほんと自分性格悪いなと思った。ちなみに出す機会がありませんでしたし、今さらどうでもいいですが、妹が一人います。こういう埋もれた設定がこの作品には本当多い。

 そしてカグヤナイツのムードメーカー、盗賊カトウ。

 この子はとにかく便利でした。何が便利って、自分から喋ってくれるんですね。この子が会話を回してくれる。リアルだとそういう人がトイレとかで抜けると一気に場が沈むわけですが、作品でも同様の現象が起きました。『盗賊の詩』は本当に書きづらかった。主要キャラで「陽」に属するのはこの子と姫しかいないのに、二人ともあんな感じになるし。

 コンセプトは「一般人」。風俗嬢の息子、ヤクザの息子、中国人と来て、何のバックボーンもない普通の中学生。そのせいで「社会から爪弾きにされるアウトロー四人組」みたいな紹介が出来なくなる弊害もありましたが、それでもこの子の「弱さ」は物語に厚みを出す上で必要だったと思います。やっぱり群像劇には色々な視点を入れていきたい。

 そして最後は月のお姫さま、ノゾミ

 問題児です。ヒロトの項で「騎士団の中では一番書きづらかった」と書きましたが、あの時に「騎士団の中では」とわざわざつけたのはこの子がいるから。ぶっちぎりで書きづらかった。書きづらかった理由は女の子だというのもそうですが、一番大きいのは書き始めてから当初の予定とキャラ付けがかなり変わったからです。

 この子、当初の構想ではそこまで活発な子じゃなかったんですね。特に顕著なのが第二章で、当初のプロットではほぼ動きがありませんでした。まさに玉座の姫って感じ。だけど「ボーイミーツガールものとして始まっておいてそれはあかんでしょ浅原はん」と担当編集さんに言われ、その時点で書いていた原稿を全消しして書き直した結果、なんかものすごく活発な子になりました。

 まあ活発な方が魅力的なのでそれは良かったんですけど、いかんせん当初の予定と変わったのでイメージがつかみ切れていないわけです。しかし期限のある連載なので再度イメージを掴み直している暇がない。そうやって手探りで書き進めた結果、僕がこの子のことを真に理解出来たのは第五章『月姫の詩』を書いている最中でした。遅っ!

 というわけで彼女を理解していく感覚は楽しかったのですが(ヤンデレっぽい)、ちょっと悔いの残る子でもありました。カノホモの三浦さんと同じであまり自信ない。でも三浦さんは書籍版の感想ではぶっちぎりで人気なので、同じようにかわいく感じてくれたならいいなあと思います。

 以上、メイン五人の紹介というか感想というか、そんな感じのあとがきでした。連載開始時の近況ノートで書いたように「この子たちの物語をもっと読みたい!」と感じて頂けたのであれば僕としては嬉しいです。今のところ続きを書く予定はありませんが、KADOKAWAの本社ビルに乗り込んで札束がぎっしり詰まったジュラルミンケースをカクヨム編集長に投げつければ予定が出来るかもしれませんので、実行可能な方はご検討ください。逮捕されるから書かれても読めないかもしれませんが。

 ところでノゾミはカテゴリが違うので置いておくとして、騎士団で一番人気のあるキャラって誰なんでしょうね。気になるので推しメン決まっている人は教えて下さい。カトウじゃない気はしてるんですけど(かわいそう)

-----(「御徒町カグヤナイツ」へのレビュ返)----

 氷月あや 様
 この作品は姫だの騎士団だのと一風変わった包装を施していますが、読み解くと「ヒロト+ノゾミ」部分は王道ボーイミーツガール、「カグヤナイツ」部分は王道ジュブナイルと、実はさほど変わったことはしていません。ということは筆力が伴わないと既視感バリバリで空中分解するわけで、そうなっていないと言って頂けたことに安心しました。

-----(「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」へのレビュ返)-----

 中城杜環 様
 僕も世界は変わっていくのだと思います。思うから、この作品を書きました。この作品が世界を変える一端となることを願います。

 @chanyou64 様
 書籍版でも感想を共有したいという感想はすごく多くて、思わず語りたいことがある作品に仕上がっているのは嬉しいです。1回目で世界が少し変わって、その変わった世界を生きた後に2回目を読むと、仰る通り感想変わってくるんじゃないかなーと思います。

 赤ト果那 様
 実は亮平のことを名指しで好きだと言ってくれる人があまりいないので、「亮平尊い」はレア感あって尊いです。三浦さんは属性なんでもいけるけどシチュエーションに地雷が多いタイプだと思います。

 記録 様
 かなり深く感じ入って頂けたようでありがとうございます。僕は若い人は揺蕩っていて当たり前のぐらいに思っているので、あっちこっちふらふらしながら具合のいいところに落ち着けば良いと思います。あとどうでもいい話かもしれませんが一人称「俺」の感想にかなりグッときました。真っすぐ感がすごい。

 Jacob Titor 様
 最近はLGBTを化学記号か何かみたいに「理解」している人が多い気がしますね。まあその流れを生み出したのが「LGBT」の人たちという側面もあるんですけど……。マジョリティがマイノリティを認めるのと同様に、マイノリティがマジョリティを認めるということも重要なんじゃないかなと最近は思います。

1件のコメント

  • 神楽耶夏輝 様

    お読み頂きありがとうございます。この作品ほんとめっちゃ好きなんですがカノホモに比べてあんまり感想貰えないので、こうやって感想貰えるのはすごく嬉しいです。「続きを読みたくなる作品」が一つの目標だったので続きを期待して貰えるのは光栄ですね。なんか間違って売れまくってシリーズ化しないかしら……しかしソンは人気高いな……

    確かにこの作品は上手くセリフに人間性が乗ったなと思います。だからセリフ書くの楽しかった。キャラが立ってればそれだけでだいたいどうにかなることをこの作品は教えてくれました。だいたい、ですけど。

    重ねて、読了および感想ありがとうございました。今後も色々と書く予定ですので、よろしくお願いします。
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