きのふの宵の口で御座ゐます。ふと南の空を見遣つた時、地平線に向かつて墜つる流れ星の群れが在りました。見間違ひ或ひは幻か、かひやぐらかと目を擦り、数を検めますと百余り。遂に到達した…夢のやうと驚きも致しました。
【曲藝團:核心部ネタバレ有り〼】
とある髭面の青年
「よもや、こうなる事があろうとは、年初の寒さに震えていた頃は思いもしなかった」
とある○の娘
「章兄、それどうゆうことなのかな?」
青年
「お白(ひゃく)は、知らないのだろうけど、初めの頃は大変だったんだよ」
男の○
「大変って何が?」
青年
「ピイブイ数が最初は週間で零から貳。千に達するのが、廿(にじゅう)年後って計算になる。巽さんあたりは既に生きてはいまい」
○の娘
「ああ、それ前も誰かが愚痴ってたよ。今はどのくらいなのかな?」
青年
「累計で三千を超えた。それも感激なんだけど、話したいのは流れ星の件。過ぐる日、百を超えたんだ」
男の○
「お星様? 数えてるんだ。少しキモいかも」
青年
「平成令和風の喋り方は控えたほう宜しいかと…それは兎も角、歴史・伝奇ジヤンルで純文学タグだと、百はひと苦労なんだ。讀み専さんとか皆無で、取っ掛かりも少ないと来ている」
○の娘
「はあ…タグとか分からないし。苦労話はあんまり聞きたくないかも。で、百を超えると何か良いことあるのかな?」
黒いドレスの美女
「あれ、あなた達、こそこそと何を語り合っているのかしら」
男の○
「あ、姐さん。章兄の愚痴を聞いてただけだよ」
青年
「毒づいている訳じゃない。感激して、その報告をしようかと」
美女
「例の話ね。聞いたわよ。福坊がはしゃいでて直ぐに分かった。流星が百を数えると新しい動きがあるって耳にしたわ」
音楽通の有識者
「俺も知ってるぞ。まあ、噂を流している張本人が俺なんだが。何やら、百を目安にもう一度、純文学ジヤンルに参戦するって件だ。あいつが」
青年
「あいつって作者のことですよね。リイダアは相変わらず、便利に何でも解説してくれるなあ」
美女
「いよいよね。続編でしょ。私が馬喰町でスカウトされて銀幕のスタアになるストオリイよね。待ってましたって感じよ」
○の娘
「え、そうなの? お極がヒロインになるって聞いたけど。違うの? キヤツチ・コピイは『今度は戦場だ』って随分前に決まってたとか…」
小柄な青瓢箪
「全然、別だぞ。おいら知ってるんだ。帝都が舞台だけど、曲藝團は関係ないらしい。続編の資料は埃をかぶっていて、別の資料っぽいのをあいつが神保町で漁っているのを春子が見たんだ」
一同
「ええ…」
青年
「すると春子が怪談師になる話も没なのか。僕とお極が御徒町に褌を買いに行って瑞穂に笑われる逸話も消えたとは。いや、待て待て、巡礼路のフアンタジイは、どうなるのやら」
美女
「そっちは今、第十一話の三幕目だったかしら、八話から中編規模になって、伏線回収も全くしないで、乗り乗りで筆を進めているみたい。巫山戯てるわね。しかも一昨日だったかしら、短歌に挑戦するとか言って五首くらい詠んで挫折したとか」
漢の○
「シヨツクなのであります。続編の題名が内定したと聞き及んでいたのですが、裏切られたような気持ちでいっぱいであります」
有識者
「こいつは皆で押し掛けて恫喝したほうが早かろう。土蔵に監禁するって手もある。強硬手段やむなしって情勢だ。おい、作造、怪力剛腕の見せどころだぞ」
○の娘
「脅したところで効果あるかなあ。色仕掛けのほうが上手く行くと思うんだよね」
美女
「仕方ないわねえ。私の出番って訳かあ」
青年
「あのう…言い難いけど、姐さんは効果も微妙かと。あの人は変わり者で、弱みがあるとすれば、お極だ。褌姿の極夜。それしかない」
漢の○
「やれやれ、なのであります」
<つづく(又の機会に)>