「言葉にならぬとも」を含む小説

引き出しの奥から見つかったのは、もう使っていないはずのガラケー。 電源は入れていないのに、液晶には『通信圏外です』の文字。 それを境に、部屋の空気が変わり始めた。 虹色に光る着…

毎晩、ポストに届く一通の白紙の手紙。 書かれていないはずなのに、その夜、僕は夢を見る。 それは誰かの記憶？ 願い？ それとも——。 ひとつずつ、夢を受け取った僕が、最後に届け…

東京下町の小さな駄菓子屋「たまや」。 人付き合いが苦手な小学六年生・迷川 拓は、学校帰りにその店へ通うようになる。 店主は、リモートワークをしながら駄菓子屋を営む20代の女性・白…

『未開封の午後―未送信の夜』 伝えたい想いほど、言葉にならない。 すぐそばにいたのに、届かなかった“好き”があった。 高校時代、親友として過ごした空（そら）と仁太（じんた）…

人付き合いを避け、図書室の静寂と本のインクの匂いに安らぎを見出す内向的な高校生、照井淳弥。彼の密かな慰めは、古いフィルムカメラで風景を切り取ることと、誰にも見せるつもりのない小説…

ビールは、ただ飲まれるだけのものじゃない。 誰かの一日を癒し、誰かの記憶を呼び起こす、“静かな語り手”だ。 この本は、町の小さな醸造家・修二が、 夜の仕込み場でひとり語った、8…

「接客業のためのカスハラ観察記録」は、理不尽なクレームに耐える日々の裏で、静かに観察され、記憶されていく“お客様”たちの姿を描く短編集。 主人公・佐々木は、一見穏やかな雑貨店の販…

《──ツー、トン、ツー、トン。》 夢の中で繰り返されるモールス信号。 その「声」は、ただの雑音ではなかった。 名前も記憶もないまま、都市の片隅で保護された女性・エル。彼女はロボ…

言葉にすれば壊れてしまいそうで、 けれど言葉にしなければ伝わらない。 幼馴染だった二人が最後に交わしたのは 思い出の景色と、言葉にならない時間。 別れの手前、心の奥底に咲いた…

雪に閉ざされた北海道の古い家。余命わずかな老絵本作家・早瀬誠一（74歳）は、十年ぶりに帰郷した娘・凛（34歳）と向き合うことになる。 かつて人気を博した『小鳥の旅立ち』シリーズの…

二組の恋人たちが「さっきはごめん。」と言い、心の中で静かな言葉にならない嘘をつく。4人の大人になりきれない大人たち。東京という都会交差点ですれ違う。揺れる気持ちに隠れた本音とは。…

※TAKE0〜7「桜木side」「ナオside」は、 どちらからでもお読みいただけます。 《あらすじ》 学生時代は学園王子ともてはやされ、女子はもちろん男子にもモテた桜木健人…

付き合って1年。 わたしはまだキミに言えていない言葉がある──。 思い出の場所でこれまでのことを思い返しながら、伝えられなかった想いを口にする。 これが最初で最後だから。 …

大学生の頃、「風邪、もう大丈夫？」と聞いただけで、佐藤君を泣かせてしまった。 ☆ 「ありがとう またね、大好き」ショートストーリーコンテストへの応募作です。

篠宮千夏は弁当を美味しそうに頬張り、誰よりも幸せそうに笑っていた。食べることが大好きで、いつも明るく振る舞うふくよかな少女。軽く交わされる「デブ弄り」も笑いに変えてみせるが、その…

この春から中学三年生になる新城虎道は、“神童”と噂される多才な少年。 妹や友人たちに囲まれた、騒がしくも温かな日常を過ごしていた。 だが、ある日彼は交通事故で記憶を失ってしまう…

デビュー作が話題になったのは、もう十年以上も前のこと。 次の一作を生み出せないまま、彼はただ「作家」としての時間を過ごしていた。 行き詰まる日々の中、逃げるように奥湯河原の温泉宿…

タイトルは、言葉にならない声や、氣持ちを、表現しました。 身寄りが無い先輩を見送る、その最中より見送りしたあとしばらくして、実感する人がいない空虚さ。 残された思い出と、先輩…

無口で冷たい目をした父が亡くなった。どこか他人事のように感じていたひかりは、実家に戻り、書斎で一冊のノートを見つける。それは、父がひっそりと書き綴っていた短歌のノート。言葉になら…