全5回の「ナツガタリ’25」運営セレクトgoodレビュー特集の最終回は、「カクヨム短歌賞」に応募された中から6作品をご紹介します。
10首連作部門からは、生命に対する鋭いまなざしから生まれた作品、群馬県の食文化を詠んだ郷土愛あふれる作品、恋を主題にした抒情性豊かな作品の3点。
1首部門からは、何気ない日常の一場面を切り取った温かみのある作品、短歌×ホラーという異色の組み合わせの作品、読み手の想像をかき立てるユーモラスな作品の3点です。
「ナツガタリ'25」では「ナツガタリミッション」というキャンペーンを実施中です。作品投稿やレビューなどのミッションで得られるポイントの順位に応じて、プレゼントをGETできる企画です。読書を楽しむ方のための「読者ルート」もありますので、ぜひご参加ください!
※本特集は各コンテストの選考とは関係ありません。
無い、持たない、流れず、などなど。
否定形をこんなに上手く使える手腕に、
瞠目しました。
それと同時に、否定形を多用することで、
独自の奥深い世界観を獲得しています。
本作のテーマは命でしょうか。
世界の深みに触れる短歌は、
すなわち命の深みに触れる短歌になるのです。
心にズシンと響く、お勧め短歌集です。
推し短歌2首。
水の舟揺られる小さな灯(ともしび)ようまれぬままの春を抱いて
あの頃の母は居ないと気づいた日めくれた布団直す手は無い
何気ない日常。
そんな些細な身近な風景を切り取っただけの短歌。
気が付くと口角があがっている自分に気付きます。
笑顔フィードバックと言うのでしょうか。笑う事で気分が楽になります。
読了感が爽やかな作品。
ここにマイナスイオン、ありますよ? どうぞ立ち寄って癒やされて行っては如何でしょう?
群馬の食文化を讃える短歌集!📜🍽️
群馬県の名物料理をテーマにした短歌作品です🏔️✨。
――地元の味を短歌で表現することで、読者に郷土愛を伝える🍜🥟。
ぜひこの作品を読んで、群馬の食の魅力を味わってください!📖✨
短歌×ホラーという異色の組み合わせ。踏切や図書館、ファミレス、公園といった身近な風景に怪奇を落とし込む手腕が見事です。
夏の夜、少しヒヤリとしたいときにぴったり。
冒頭より、タイトルにもご使用されている「割り切れない僕ら」という言葉に引き込まれてしまいました。一瞬、口語体な現代短歌を予測しましたが、全編を通して筆者様らしい古典的な文語体もお使いになられ、そこに響く「美しきしらべ」が奏でられております。
特筆すべき点は間違いなくその「韻律」の美しさに帰結します。
勿論、詠まれている内容も素晴らしいです。
私は言葉のリズムというのは、句またがりや字余りを起そうが、そこにある「響き」という感覚で知覚します。言葉を脳内でどのように捉えるのか、これは個人個人での相違はあるかもしれません。私はこの辺りの感覚が「筆者様はずば抜けて素晴らしい」と思っています。
◇その言葉のひとつひとつが、丁寧に磨き抜かれた優しい輝きを放つ翡翠の様に、私には強く感じられるのです。
冒頭1首より、その韻律の美しさを放ったこちらの10首、2首目より確固とした定型感覚とこれでもかの韻律がお手本の様に詠まれております。流れる水の如く、一切の破綻や不安を感じさせない美しさです。
その内容についてはネタバレになるのでここには書けませんが、10首とは何か、どのようなまとまりを持たせるのか。しっかりと練り込まれ並べられたであろう歌は、その美しくも強い流れに一気に引き込まれてしまいます。
お勧め致します。
短歌とは、自我意識を鮮烈に詠う抒情性にその魅力が存在します。気をつけねばならないのはありきたりで派手な言葉を使い過ぎると、一度読めばもう十分な大喜利の様になってしまう事です。ですがこちらの10首は何度も噛みしめて読む事が可能な、普遍性の獲得に至っていると私は思います。どうぞ、繰り返しご堪能下さいませ。
皆様、是非、宜しくお願い致します( ;∀;)
森でクマに出会った恋人探しから、火星で重力に抗う僕たちまで。
この短歌は現実と妄想を自在に行き来する。
「君の目の青い虹彩煌めいて殺人ビームが僕を撃ち抜く」の一首に、恋の破壊力を見た。
私もまた、この短歌の中で踊るプランクトンになりたいと思った。