スペースオペラとはなんぞや? さくりと説かせていただきますればSFの1ジャンルであり、科学的要素の考証より娯楽性を重視したものとなりまする。
舞台は宇宙! テーマは戦争、冒険、キャラもの、その他なんでもあり! 宇宙船やらアンドロイドやらビームやら出てくるよ! と、乱暴に要素を挙げてみましたが、とにかくSF的エンタメ作品ってわけですね。そうとなればみなさまにも思い当たる作品、あるのではないでしょうか? ちなみにおじさんのわたくしですと『スターウォーズ』は当然として『レンズマン』、『宇宙船ビーグル号の冒険』等々を思い出しますよー。
そんな前置きをしました理由はもちろん、今月のテーマが『スペースオペラ』だからですね! 宇宙という舞台と用いられるSF的ガジェットは共通していますが、それをもって紡がれる物語は書き手の創意によってまるでちがう輝きを魅せてくれるもの。どうぞその人の筆にて創られし光の彩、存分にお楽しみください!
諸々あって会社を辞めた文野真里は新規のオンライン宇宙艦隊戦SLG(シュミレーションゲーム)『銀河大戦』と出会い、一周年記念の大会ではなんと強敵を下して優勝を果たした。……それにより報されるのだ。地球人は異星人によって試されている。合格するには異星人と本物の宇宙艦隊をぶつけ合う『銀河大戦』で勝利しなければならない。しかもこれが最後のチャンスであるのだと。艦隊司令長官となった真里は地球の未来を決めるゲームへと臨む。
万単位の艦が宇宙にひしめく艦隊戦はスペオペの醍醐味ですよね。しかもそこへ真里さんの司令としての戦略が置かれて戦術が為され、指揮下にある指揮官たちの奮迅によって戦局が動いていく様を見ながら戦闘の行方を追えるのですからたまりません。
ゲームが土台に置かれていて感覚的にわかりやすいことも魅力な本作ですが、キャラクターのスタイルや思考を軸に練り込んだ、爽快なだけじゃない物語としての分厚い魅力が最大の売りです。
さあ、真里さんと仲間たちがどのように活路を切り拓くのか? 刮目してご覧ください。
(「ロマンとの遭遇! スペースオペラ!!」4選/文=高橋剛)
2033年、月面に3つの異世界を繋げる次元跳躍孔“ホール”が発現。人類(ヒューマンビーイング)は海底人(ディープシーライブズ)及び恐竜人間(サウロイド)と講和条約を結び、「九条約」を結ぶこととなった。しかし話はそれで終わりはしない。三者のみならず他の異世界人やエイリアンが出現し、総勢七者となった彼らは己が種の生存をかけ、相打つことに……!
異世界=パラレルワールドの住人である5つの種族に2種のエイリアンを加えた生き残り合戦、このたまらないストーリーを実現した“ホール”の設定がすばらしい! 細やかさと濃やかさはもちろんのこと、設定が各陣営の立場や思惑にしっかり絡められているのですよ。説明が多くなるのはSFの宿命ですけれども、不可欠な説明を描写へ練り込んでドラマの起点とし、緊迫感を引き絞る舞台装置として機能させる著者さんの手腕は唸るよりありません。
本格派SFでありながら戦争ドラマとしても間違いなくおもしろい! ハードな世界観を求める方へ真っ先におすすめしたい一作です。
(「ロマンとの遭遇! スペースオペラ!!」4選/文=高橋剛)
異星からの侵略を受けた地球。移民船団ブラボーⅡは種の存続をかけて送り出された希望の種だ。その中で暮らす軍人、浅井零は身体のほとんどを失い、残された臓器を戦闘機に組み込んだフルサイボーグである。そんな彼がオウギワシの遺伝子を組み込まれた半獣人の女性ミラ・スターリングと出会ったことから物語は始まった。互いの様に驚きながらも距離を縮めていくふたり。しかし宇宙でのデートの最中、謎の戦闘機に襲われて……
移民船のパイロットといえばSFアクションにおいて主役の王道ですが、零さんとミラさんの有り様自体が恋路のど真ん中で大障害になっている図式、この創意と工夫に眼を奪われました!
設定の練り込みもさることながら、SFをキャラクターで魅せることは本当に難しいものです。それを冒頭からしっかり描き込むことで読者の意識を惹き込み、さらに描き出す中で物語の本筋を進めていく。これぞ構成の妙ってやつですよね。
ふたりとブラボーⅡ、両者の先になにが待っているものか、ぜひ追いかけていただきたく!
(「ロマンとの遭遇! スペースオペラ!!」4選/文=高橋剛)
エリート中のエリートとして地球帝国の国税省へ入省し、順風満帆の人生を約束されていたはずの斉藤一樹。しかし彼が配属されたのは本省ならぬ場末の取り立て部署、特別徴税局徴税部第三課だった。なにせ課員は埒外な輩ぞろい、仕事は武装滞納者相手の強制執行(宇宙戦)! エリート街道から修羅場へ蹴り込まれた一樹はどうなってしまうのか!?
絶対に税金払いたくない勢を圧倒的火力で打ちのめし、絶対に滞納分を取り立てていくお役人が相打つ艦隊戦! これが実に本格的で希有な見所になっているわけですが、やはりタフなキャラクターたちと、彼らによって演じられる風情に注目していただきたいところです。なぜならこの味わいって、社会人の絶対義務をテーマにしたお仕事ものならではのものですから。仕事だから嫌でも本気で戦える。仕事だから理不尽に耐えたり耐えさせたりもする。このドライでシニカルな味わい、ひと言で表してしまえば「お仕事って大変!」。
ストーリーラインの太さも見逃せない、仁義なき徴税ドラマです。
(「ロマンとの遭遇! スペースオペラ!!」4選/文=高橋剛)