カクヨムで作品を読むときは、普段はスマートフォンのカクヨムアプリを使って読んでいます。スマホからどこでもすぐに小説を読めて便利ではあるのですが、長時間にわたって読むことが多く、スマホ首気味になってしまいました。そこで先日、寝るだけで首の骨を正しい位置に矯正してくれるストレッチ枕というのを購入しました。これは効きますね。これで好きなだけ読める!と思いきや、次は眼精疲労と腰痛が……。すべてを解決してくれる枕はないものですかねぇ。さて今回は、飯テロ、Vtuber、歴史SF、将棋ドラマと最近個人的に注目しているワードにちなんだ作品を選んでみました。秋の夜長のお供にお楽しみください。ただ皆さんはくれぐれも私のように身体を傷めないようにお気をつけて。
主婦の織田川香織は交通事故に巻き込まれ、目覚めると異世界で難民の美少女に憑依していた。町医者の華老師に救われ、身を寄せることになった香織は、自分が得意とする料理の腕前を活かした大衆食堂を開くことに……。
ヒロインの香織は主婦歴15年のベテランお母さんです。彼女の作る料理は、ごく普通の家庭料理ですが、それでも異世界の人々にとって初めて味わう異国の味わいです。
玉ねぎのおひたし、粉ふきイモ、小松菜の和え物、お豆腐と大根とネギの味噌汁、甘い玉子焼きなど、見た目は地味ですが食べる者の健康や好みを考えて香織が真心こめて作り上げた品々です。
近隣の小さな子供や、ひと仕事を終えた労働者、赤ん坊を抱えた母親たちが食堂に訪れ、香織の素朴な料理を味わいながら、心と身体を満たしていく光景が心温まるのです。
前世では頑張っても報われなかった香織が、喜ぶ人の顔を見て、それまでの辛さや悲しみが少しずつ消えていく姿が泣けてくるんですよね。
故郷の母の手料理を思い出させる、そんな温かくて素朴でしみじみと味わい深い一品です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
『バトルアリーナV』。それはヴァーチャルなアバターで配信活動をするVテイナーたちが、自分たちの人気を武器にバトルを繰り広げる近未来のヴァーチャルエンターテイメント競技だ。
主人公の桜色ひかるは、元気で明るい女の子。デビューしたてのVテイナーであり、自身も大のV好きオタク。
物語に登場するライバルのVテイナーたちは、いずれも個性派揃いでケモノ系ツンデレ少女のワンワン・ルー、真面目系剣術少女の海月カタナなど、タイプの異なる美少女たちで、いったい誰を推しにすればいいのか悩ましい限りだ。
バトルで出会った仲間たちと友情を育み、切磋琢磨してアリーナを駆け上がっていくストーリーが実にスポ根でワクワクするんですよ。
Vテイナーたちの力は、チャンネル登録数やコメント数が反映される。つまりはリスナーの応援です。新人の登竜門といわれるルーキーランクの頂上戦を目指し、ひかりたちは協力して登録者数アップに邁進する。
常に明るく全力で配信を楽しむ、そんなひかるのパフォーマンスがリスナーの心を揺さぶり、奇跡を起こしていく。ちょっぴり天然な彼女が巻き起こす逆転劇から目が離せません。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
理系の男子高校生の筑波博は、気がつくと戦国時代にタイムスリップしていた。しかもそこは史実とは異なり、機神(くりかみ)と呼ばれるからくり鎧をまとって武将たちが戦うメカニカルな世界だった。戦死した松平元信(徳川家康)から機神を託された博は、ひょんなことから織田信長に仕えることに……。
戦国サイバーパンクとでもいうべき、歴史小説とSFの融合した独特な世界観がいいですね。
人並み外れた剛力と特殊な武装を装着者に与える機神ですが、その力の源は精神の強さ。これまで喧嘩や争い事とは無縁で生きてきた博には、機神の真の力を発揮できない。
臆病者ながらも自分が死なないため、そして無駄な犠牲を出さないため、必死に知恵を絞り、機転を巡らせる姿が真に迫って引き込まれます。
戦いたくない博ですが、武田家への復讐を誓う諏訪かえでの寄騎を命じられ、三河国の平定を急ぐかえでの独断により一向一揆との戦いに巻き込まれていきます。
果たして最強の武田軍団を相手に現代知識や技術がどこまで通用するのか。今後の展開に期待です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
いま最も若手選手が活躍している巷で話題のプロ競技を知っているだろうか。そう、将棋である。
この作品は、将棋のプロリーグへ挑む若手棋士を描いた人間ドラマだ。
主人公の長谷一輝は、16歳の秋に四段に昇段しプロ入りしたばかりの期待の新人。
奨励会ではプロ最年少記録更新も期待され天才少年と呼ばれた一輝ですが、プロの世界はそう甘くない。スタートこそは好調だったものの、次第に一局の重み、一手の重みがのしかかります。
下位クラスであるC2級で壁にぶつかり、自分の力不足を思い知らされる一輝ですが、プロとしての仕事や次の対局は忙しくやってくる。
そしてもう一人の主人公とでも言うべき、幼馴染の女流棋士・牧野小夜もまた、女流タイトル獲得を目指し女子リーグのなかで必死に勝利の一手を探し求める。シビアな勝負の世界で奮闘する二人の男女の姿が手に汗握ります。
プロ棋士の誰もが一手一手に己の人生を賭けているからこそ白熱した対局になるのです。心を震わせる名局の数々を、是非ご覧あれ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)