月終わりが近づく度、「もう1年が○ヶ月も終わるだと!?」と驚愕しているわたくしです。まあ、それだけ変化のない仕事尽くしな日々を送れていればこそと思いましょう。ちなみにゴールデンウィークも全日お仕事でした。
 そんなわたくしの数少ない休息活動は季節に一度、整体師さんに肩こりをほぐしていただくことなのですが、行く度に「施術しづらいお客さんランキング第4位」をキープしていることを告げられていたり。ちなみに第3位は「体が分厚すぎて施術台に収まらない方」、第2位は「身長が高すぎて施術台に収まらない方」、第1位が「横幅がありすぎて施術台に収まらない方」です。……わたくし、お太りになられているとはいえ施術台に収まる方なのですけれども、「肉が硬すぎて指が入らない方」とのこと。なんでしょうね。なんだかこみ上げてくるものがありますね。
 まあ、そんな感じでいろいろありますが、今月は新作のご紹介です。どうぞお楽しみくださいませー。

ピックアップ

一世一代の告白を邪魔するのは未来から来たタイムリーパー!

  • ★★★ Excellent!!!

 夏秋冬 陽(はるなし はる)は幼なじみの早峰京子へ告白しようと決意した。しかしその矢先、クラスのマドンナ・天川小春が彼へ告白してきたではないか! しかも彼女はタイムリーパーで、このまま陽が京子と付き合えば3年後に刺殺されると言う。と、そこへもうひとりのタイムリーパーで、前世陽と愛し合ったが結ばれなかったと言い張るお嬢様が登場! 陽はいったいどうなってしまうのか!?

 キワっキワな会話劇を展開する小春さんとお嬢様は「意識だけタイムリープしてきた」と主張する人たちで、信憑性はゼロ。ここだけでもおもしろいのに、陽くんが話の都合に流されず、いいツッコミをしてくれることでさらに劇が際立っているのですよね。

 が、それだけじゃないんです。これまでのカオスな与太話が、オチに至って一気にひっくり返るんです! 力尽くなコメディかと思いきや、実は緻密な構成に翻弄され、フィニッシュブロウへ誘導されていたことがわかる——ぜひともこの最高のやられた感を味わっていただきたく。



(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋 剛)

なんでもなくてこの上ない、一期一会

  • ★★★ Excellent!!!

 赤点だったテスト用紙を海へ捨ててやろうとした中学生の“僕”は、それをする直前、釣り師のおっさんに止められる。そこからなんとなく話をする間柄になって、“僕”はおっさんが働いている飲食店が父の勤務先だと知った。それだけのことだったはずなのに、“僕”はその父から唐突に引っ越しすることを告げられて……

 つまらないことをきっかけに中学生と社会人が友情にも届かない交流をして、別れる。それだけのお話なのですが、故にこその叙情が匂い立って、ほろっとしてしまうのですよ

 “僕”にとっておっさんという人は異分子で、非日常の存在です。ある意味、初めて邂逅した「身近じゃない大人」なのですね。だからどう付き合えばいいのかわからないのですが、それでも向き合っていく中、小さいけれども確かな悟りを得る。そして読者はさりげないストーリーの最後に理解するのです。ああ、これは青春の物語なんだって。

 勢いよく突きつけるのでなく、やさしく差し出されるような少年の成長劇です。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋 剛)

ラジオで語られる投稿、その奥に隠された真実とは……!?

  • ★★★ Excellent!!!

 洗濯機は壊れたが、洗濯はしなければならない。そこで衛藤光莉(えとう ひかり)はコインランドリーへ。しかしそこの主的な存在である片桐に強引なナンパをされていた女子大生、浜音美波(はまおと みなみ)を見つけて……。ナンパは誤解だったのだが、ラジオを聴いている美波の様子がおかしい。片桐曰く、彼女は物事をくわしく読み解く癖があり、その奥にある真実を導き出すのだという。かくて美波が語った推理とは?

 コインランドリーに流れるラジオ番組、そこへ投稿されたちょっと不思議な話の謎が美波さんによって解き明かされます。謎の先に現れる新たな謎あり、それを丸っと明かす意外な展開ありで、安楽椅子探偵ものの醍醐味をいっぱいに味わわせてくれる作品なのですが。それと同時に、光莉さんを中心にした出会いのお話でもあるのですよ。「理」と反しつつ寄り添うものが「情」。その両者を何気ない掛け合いで魅せてくれる点、見逃せません。

 ミステリーと人間ドラマの合い盛り、どうぞお楽しみあれ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋 剛)

労働基準法ってなんぞ!? 全力で、でもゆる〜く解説

  • ★★★ Excellent!!!

 労働基準法とはなにか? それは労働者の権利を守るための法律である。しかし法律を見ても専門書を開いても内容は難解に過ぎ、理解することは困難だ。だからこそ、やわらかく噛み砕いてお伝えしようではないか! 志を胸に今、津多 時ロウは立ち上がる!

 法律のよくないところはとにもかくにも文章が小難しい上、繋がりがよくわからないことかと思います。解説書にしても「よく知っている人」の解説なので結局わかりにくい!

 でも、津多さんの解説は違います。とっかかり部分から知らない人に伝えることを意識してお話してくださっているのですよ。一部を抜粋すれば「法律って優先順位があるのよ」、「法律は大きい番号から順番に章、節、条、項、号」、実にわかりやすいですよね。

 そして本編は労基法を“条”ごとに解説。心情や実情なんかも交えられていて、濃やかな内容を実におもしろく読ませてくださるわけです。

 勤労は三大義務のひとつ。これを機にちょっと学んでみるもよろしいかと!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋 剛)