あっという間に3月。花粉の襲来期ですね。皆さまのお鼻は無事ですか?
 今回は柴犬と一緒の異世界転生から、さまざまな異世界の住人によるツイッター風の投稿を模したお話、異世界(ニホン)から帰還した「聖王」が『社畜』の概念を覚え、なにがなんでも休暇を所望するお話、とにかく勇者になりたい魔王の勘違い系コメディ……と、クスッと笑えるような異世界ファンタジー作品をご用意いたしました。おそらく、『異世界おじさん』が好きな方にはハマるのではないでしょうか。
 少しずつ暖かくはなってきたけれど、鼻がむずむず、頭がぼーっとする、そんな季節にお家でまったり読むのにぴったりな癒し作品をお楽しみください。

ピックアップ

最強の柴犬が邪悪な敵を薙ぎはらう……

  • ★★★ Excellent!!!

 サブローさん、かわいいよ、サブローさん、かわいいよ。
 いや、それだけでは駄目なのであるが、実際のところ、サブローさんはかわいいのである。それがこの物語の胆と言っていい。

 主人公シバタは、柴犬のサブローさんと散歩している最中、異世界に飛ばされてしまう。思わぬ状況に戸惑いながらも、シバタは魔王の討伐に赴く。仲間も増えるが、その一方で強力(?)な敵も姿を見せる。サブローさんの助けを借りて(?)、シバタは魔王軍団と立ち向かう。

 話の流れはこれであっているはずだが、なぜか違うような気もする。とにかくサブローさんがかわいい。もふもふしたい。そんな話なので、ぜひとも読んでいただきたい。
 犬が好きな人ならば、さらに心に刺さるのではないか。

 あ、随所に盛り込まれた犬の知識も魅力。知らないことも多かったので、感心することしきりでした。

かつてここまで一緒に朝まで呑み明かしたいと思える聖王様がいただろうか?

  • ★★★ Excellent!!!

「聖王」と呼ばれる人って、どんな人物を想像します?
僕はやはり博愛精神に溢れた立派な人で「人類皆兄弟、仲良くしなきゃなりませんぞ、おっほっほ」みたいな人物を想像しました。

でも、今作に登場する聖王様は違います。

まず、現代日本の、とりわけオタク文化に毒されたのかネコミミカチューシャを愛用し、魔法少女アニメのオープニング曲を口ずさんじゃったりします。
かなり想像と違います。
先日、「スター・トレック」のカーク船長役ウィリアム・シャトナーが 「ラブライブ!」の推しを聞かれ「海未」と即答したというニュースを聞いて驚いたのですが、それと同じぐらいの衝撃でした。

さらに世界を統べる聖王様、百年ぶりに世界へと戻ってきたというのに「休暇を取りたい」などと言います。
おまけにそれを諫める諸侯らを無視して、密かにお忍び休暇旅行へと出かけてしまいます。
ぶっちゃけ、やりたい放題です。暴れん坊聖王です。

そんな聖王様、無理矢理従者にした獣人の少年を女装させ、あろうことか萌えを感じてしまいます。
同性愛に対して寛容なフランシスコ法王もびっくりな男の娘愛好志向、正直なところ、この時点で僕はかなりこの聖王様に親しみを感じておりました(ぁ

そしてお忍び休暇旅行が辿り着いた真実、そこで語られる聖王様の嘆きに、きっと多くの男性読者は「聖王様、今夜は朝まで呑もう。奢るぜ!」って言いたくなるに違いありません。
ええ、シンパシー半端ないです、聖王なのにそんなん普通あらへんやん、聖王ハンパないわぁって感じです。

きっとあなたもこの聖王様に親しみを感じるはず。今作はそんな物語です。