物書き業の常として、昼は寝て、夜に執筆活動をするという昼夜逆転の生活をしております。夜は静かで作業が捗る、邪魔が入らないというのもありますが、このスタイルのいいところは出版社の編集者が出社する朝方に原稿を提出して、ライターが寝ている間に原稿のチェックをしてもらい、夕方ごろに起きてくるとちょうど修正案が送られてくるので、時間の無駄なく効率的に働けるという点にあります。ただ唯一の問題点は、日中に寝ていると部屋が高温になってしまうこと……。最近、急に暑くなったので日中に寝てると汗だく、喉もカラカラになって飛び起きます。これはマズい! 熱中症になる! とさすがに危機感を持ち、頑張って朝型スタイルに戻しました。自分と同じく夜に執筆しているという方もいるのではないかと思いますが、くれぐれも熱中症にはご注意を。もちろん、昼に起きて活動されている方も水分塩分をしっかりと取ってください。これから始まる暑い夏、何事もなく一緒に乗り切りましょう!

ピックアップ

空から天使が降りてきた! 無感動夫婦の宇宙農家生活

  • ★★★ Excellent!!!

 人類が銀河の彼方へ進出し、戦乱が続く宇宙時代。孤児生まれの兵士ノーカは、上官から「適性なし」として退役を命じられる。田舎の惑星で農業に慣れ始めた頃、突如として空から天使が降ってきた。ノーカは成り行きからその美女アンジェと結婚することに。無表情、無感動、無目的な似たもの夫婦がおくるスローライフ・ファンタジー・SFです。

 物心ついた頃から戦場で育ち、生きる目的も喜びもなく漫然と生きてきたノーカと、この世の外からやってきて人間離れした美貌と浮世離れした精神性をもつ天使のアンジェの淡々とした農家の日常が描かれるのですが、とにかくこの二人、一切ぶれません。

 とてつもない美女が現れたのに無関心なノーカ、いきずりの男性と勧められるがままに結婚してしまうアンジェ。

 世にスローライフものは数あれど、ここまで感情の揺れがない主人公とヒロインの暮らしぶりは、スローライフの究極系といっていいでしょう。

 本人たちは夫婦生活になにも感じていなくとも、周囲の人々は落ち着いていられない。朴念仁のノーカに、いきなり美人の嫁が現れて近所の農家や組合、販売所は大騒ぎ。

 無私無職な二人が無自覚に騒動を巻き起こすギャップが可笑しい新感覚のスローライフコメディです。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)

メイド喫茶へ潜入せよ! 女装男子のスパイアクション!

  • ★★★ Excellent!!!

 表向きは男子高校生として学校へ通い、裏では探偵まがいの事件屋をしている少年・小林大悟が依頼されたのは、新宿の片隅にあるメイド喫茶『ルナティック・イン』の潜入調査だった。女顔であることを利用して、メイドとして潜り込んだ小林は、そこで麻薬組織の手がかりを探っていく……。

 小林は、店の内情を探るうちに普段はメイド喫茶として営業しながらも、月に数度の日には隠し部屋で特別な客が訪れていることを探り出す。

 そして自分と同じく店に潜入して秘密を探るメイド・明日葉晶子と出会い、協力をもちかける。しかし、時すでに遅し。二人の動きは組織に嗅ぎつけられていたのだった。

 探る者と探られる者、どちらも事が露見したときのことを考えて二重、三重の保険をしておくクレバーな駆け引きがいいです。

 次第にメイドの正体や組織の実態が明かされていくストーリーから目が離せません。窮地に陥った小林はいかにして切り抜けるのか。

 美しき美少女メイドと男の娘スパイ、ドラッグが織りなす危険と魅惑に満ちた作品です。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)

洋菓子店は甘くない。若き店長と美少女スタッフたちの事情

  • ★★★ Excellent!!!

 美味しいケーキとかわいい店員が評判の『洋菓子店スタリナ』。しかし経営状態は火の車。若き店長の灘征四郎は売上げアップを模索するが、スタッフの四人の美少女たちにもそれぞれ事情を抱えていた……。ヒロインたちの悩みと経営難に主人公が立ち上がる、甘くて甘くないスウィートラブコメです。

 天真爛漫な女子高生の結城真帆。優等生でお嬢様の丸井華。金髪ギャルな矢野未来。イタリア生まれの美女キッカ。それぞれタイプの異なる美少女揃いだが、可愛いだけではなく意外な一面や抜けたところもあり、溢れるキャラクターが魅力的です。

 いつも美少女たちに囲まれている店長がうらやましい限りですが、彼女たちの笑顔の裏には将来の進路、友人関係、家庭環境、過去の失敗と後悔など、それぞれに悩みや葛藤を抱えていて、甘いラブコメにビターなホロ苦さがほどよいアクセントになっています。

 普段は気弱な店長ですが、女の子たちに手を貸したり、そっと背中を後押ししたり、年上の男として頼りがいを見せるところが憎いです。

 そんなこんなでヒロインを救っていく店長だが、はたして店の経営は立て直せるのか! 五人の奮闘に乞うご期待!


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)

すべては弁当のために! 二泊三日のきまぐれ一人旅

  • ★★★ Excellent!!!

 弘前大学の近所にある定食屋『惣菜さとう』は、三十年以上、地元の学生に親しまれてきた地元の名店。その店が閉店するというニュースを聞き、青森まで片道25,460円をかけて、思い出の弁当を求めて二泊三日のプチ里帰りした作者の綴るルポルタージュです。

 ひとつの弁当を食べるために大金をかける。なんとも奇矯な帰郷ですが、そんな変わり者なだけあって短い文章の中にも読者を引き付ける可笑しみがあります。

 学生時代を過ごした街に戻ってきて作者が感じたのは青春の残り香。

 大学を訪問し恩師の小言を聞き、生協職員の優しさに癒やされ、変遷した街並みを眺め、かつて住んでいたアパートの前を通り過ぎる。ふと脳裏をよぎるのは片思いの女子を同級生に奪われた悔しさ。愚かしくも愛おしい青春の痕跡をたどる姿は、読み手の我々にも追憶と郷愁の念を呼び起こします。

 そして旅のメインである『惣菜さとう』を訪れた作者ですが、なんと弁当は売り切れ。しかも翌日は定休日。弁当は最終日まで持ち越しとなってしまいます。はたして思い出の弁当にありつけるのかと、いきあたりばったりな旅の様子が最後までハラハラさせてくれます。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)