カードバブルってご存知ですか? トレーディングカードゲームのカードが海外のオークションで4000万円以上で落札されたり、セレブや有名人がカードをアクセサリーとして身につけたり、売り場のパックを奪い合って客が暴徒化して拳銃を使った強盗事件が起きたり、高額カードを精巧にコピーした贋作カードを密輸しようとした売人が税関で捕まったり……、まるで漫画やアニメのような話ですがファンタジーの話ではありません。信じがたいことですがすべて現実の話です。事実は小説より奇なりとはいいますが、ここ最近のリアルはファンタジーを追い抜いてしまいました。創作者の皆さん、現実に負けないでください! 現実に立ち向かいましょう! 遅ればせながら、あけましておめでとうございます。今年の抱負は『戦わなきゃ現実と』です。今年もよろしくおねがいします。
大人気トレーディングカードゲーム『モンスター・サモナー』をこよなく愛する天川ツルギは、ある日、カードバトルで政治も経済も決まる平行世界に転移してしまう。TCGプレイヤーにとっては夢の世界にやってきたツルギが、カード知識とプレイングで無双するカードバトル現代ファンタジーです。
貧富の格差、国や組織の争いすらもカードゲームで全てを決める。バトルが強ければ誰でも成り上がれる公平な世界だが、バトルの敗者やレアカードを持たない貧困層は一方的に搾取される不公平な世界でもある。
そんな世界でツルギの唯一の救いは、これまで集め続けたカードコレクションを持ったまま転移できたこと。市販のパックからレアカードが滅多に現れないこの世界では、クズカードを売るだけでたちまち大金持ちに!
しかしそんな潤沢なカードプールがありながらも、ツルギは安いコモンカードを組み合わせて戦うチープデッキでレアカード自慢の成金プレイヤーに挑むバトル展開が玄人好みで熱い!
作者はひとまず実験作の予定だそうだが、もっといろいろなデッキや、さらなる大舞台でのツルギの無双が見てみたい!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)
プレイヤーが惑星を開拓して銀河帝国を築き上げていくオンラインゲーム『Galaxy Growing Online』。アップデートの直後に意識を失い、ゲームそっくりな世界で目を覚ました主人公シンセイが、ゼロから惑星を開拓して成り上がっていく痛快スペースオペラです。
別世界に転移したシンセイに与えられたのは初期のプラント艦一隻と、未開発の辺境の惑星ひとつだけ。しかし彼はプレイ歴二十年を誇る超ベテランプレイヤーだった。
地道に惑星をテラフォーミングし、畑を耕し農作物を植え、商会と取引し資材を集め、破格の待遇で有能な人材を迎え……できることからコツコツと惑星を発展させ、小さな惑星国家として認められるまで成功する。
さらには自分と同じくこの世界に飛ばされたゲーム時代のフレンドを味方に引き入れ、内政で国力を蓄えたシンセイの国ヤマトはいよいよ領土拡大へと舵を切る!
ゲームでできなかったことを現実で叶える! ベテランゲーマーのシンセイと仲間たちが繰り広げる活躍にワクワク感がとまらない!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)
階段から転げ落ちた男子大学生の道井旭は、目覚めると世界的名探偵シャーロック・ホームズの生みの親アーサー・コナン・ドイルに憑依していた。ホームズを読んだことがない主人公が若き日のコナン・ドイルとなって凶悪事件に巻き込まれる英国時代劇ミステリーです。
SFではタイムスリップは定番ですが、ミステリー界の大御所に魂が乗り移るというトリッキーな設定が目を引きます。
前後の記憶はないままアーサー・コナン・ドイルとして目覚めた旭は、霊媒師の老婆アイリーンと助手ジャックの診断で、ドイルの身体に魂が乗り移っていることを知らされる。
不思議なことに目覚めたドイルの服には何者かに斬りつけられたような裂け目があり、路地を歩けば馬車に轢かれかけ、たびたび正体不明の赤毛の男につけ狙われる。そして鞄の中には身に覚えのない大粒の宝石が入っていて……。
当時のドイルはまだ小説家ではなく、エディンバラ大学に通う無名の若者にすぎない。そんな彼の身にいったい何が起きているのか。そして旭は何故タイムスリップしてしまったのか。ヴィクトリア朝の古き良き時代の風を感じる一作です。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)
自動車整備工場で働きながら定時制高校に通う二十歳の石上翔太は、全日制に通う十八歳の女子高生・水瀬志保と出会い、恋をする。昼間は全日制、夜間は定時制の授業が行われる高校で、昼と夜で同じ机を共有する二人の交流に胸がときめきました。
昼夜で同じ机を使う翔太と志保の机のラクガキを介した文通が始まる。ほとんどが一言ずつのたわいのない雑談ですが、メールやLINEで瞬時に連絡できる時代にも関わらず、交換日記のようにゆっくりと時間をかけて返事を待つ姿が古風で奥ゆかしいです。
両親を亡くし中学卒業と同時に働きに出ていた翔太のように、定時制に通う生徒たちはさまざまな事情で進学を断念した子たちで、順風満帆に青春を謳歌する全日制の生徒への引け目がある。また全日制に通う生徒も定時制の生徒への偏見や差別がある。
そんな垣根を飛び越えて対等な友人として翔太と向き合う志保のさっぱりとした性格が眩しく、彼女に惹かれていく翔太の男心が初々しいです。
定時制と全日制の溝を取り除くため、二人は学園祭での生徒交流を提案するが……。果たして近くて遠い二人の距離は縮まるのか、結末に期待です。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)