図書館、博物館、美術館、科学館、動物園、水族館、植物園、昆虫館、天文台……etcetc。「ミュージアム」は、人類がこれまで地球上で積み上げてきた歴史と文化を収集する知の殿堂だ。そして将来を担う子供たちの好奇心と情操を育む大切な学びの場でもある。そんなミュージアムも昨今の諸事情により各地で一時休館が相次いでいるという話を聞くとやるせない思いにかられます。それでも再開を目指して頑張っている職員や、ミュージアムを愛する人々の思いを伝えたい。そう考えて、今回はミュージアムをテーマにした作品を取り上げてみました。自宅に籠りがちなみなさんもミュージアムに行ったつもりになって、歴史や文化に思いを馳せてはいかがでしょうか。

ピックアップ

ここは魔法の図書館! 司書の少女の不思議な物語

  • ★★★ Excellent!!!

 リヴレ王国で一番の蔵書量を誇る王立図書館で司書として勤務する少女メル・アボットが遭遇する不思議な冒険譚です。

 市民なら誰しもが利用できる王立図書館に収められた書庫には、ただの本ばかりではない、古の魔法使いが遺した魔導書も眠っている。

 人付き合いが苦手で本好きな少女メルは司書として図書館業務に携わるかたわら、魔導書が巻き起こす騒動に巻き込まれる。

 魔法使いの主人が遺した日記帳を探す使い魔の手伝いをしたり、人間と知識を蒐集する図書館迷宮に閉じ込められたり、禁忌の魔術を求める魔女に狙われたりと、魔法の図書館という舞台装置が生み出す世界観が幻想的で、メルが体験する白昼夢のような小さな冒険に陶然としてしまいます。

 本作はシリーズ構成になっているので、まずは過去作から順番に追っていくのをおすすめします。図書館を訪れて本棚の隙間に隠された古の叡智を探してみたくなります。


(「ミュージアムへ行こう」4選/文=愛咲優詩)

武装する博物館! 文化財保護は命がけの戦いだ!

  • ★★★ Excellent!!!

 全世界を巻き込む大戦によって散逸してしまった文化財を保護するため、国際条約によって設立された地球博物館。学芸員の鹿嶋ミカは、文化財緊急保護チームの一員として、文化財を闇取引する美術ブローカーの取締りを進めていくうちに贋作組織の存在にたどり着く! 文化財を保護するために学芸員と悪の組織が銃撃戦を繰り広げるサスペンスアクションです。

 主人公のミカは文化財に宿った人々の思いを感じ取る超直感の持ち主で、不正を許さない正義感をもった熱血少女です。

 文化財緊急保護チームは博物館の学芸員でありながらも捜査権を与えられた特殊部隊で、銃器を持った戦闘員が待ち構えるアジトにも単独で突入していく無鉄砲なミカの姿に手に汗握ります。

 小さな事件をきっかけに次第に巨大な組織の存在が明かされ、ミカはさらなる危険へと飛び込んでいく。アクション映画のような大胆な戦闘シーンとストーリー展開に圧倒されます。

 博物館は多くの人々の努力と熱意によって成り立っている。文化財保護の意識に目覚めさせられました。


(「ミュージアムへ行こう」4選/文=愛咲優詩)

名画には魂が宿る! "見える"学芸員の美術館奮闘劇

  • ★★★ Excellent!!!

 宿木美術館に展示された美術品には魂が宿っている。この美術館で働く条件は、"見える人"であること。作品に宿った魂と対話できる特殊な才能を持った学芸員・本郷司が、毎回、美術品の魂たちに振り回されるドタバタ騒動が愉快でした。

 いつも本郷をからかう美女の『モナ・リサ』、大声で騒がしい『ムンタの叫び』、頑固者の『学者の肖像』など、美術品にはそれぞれ個性的な魂が宿っている。美術館を逃げ出してしまった魂を探し回ったり、ボイコットをするレプリカたちを説得したりと、彼らのために本郷は奔走する。

 毎日のように事件や厄介事を巻き起こす彼らだが、気分次第でファッションを楽しんだり、気に入った人間に寄り添ったりと、人間味があって枠にはまらない自由奔放さが、いかにも芸術作品らしい。

 私たちが美術鑑賞をしている際にも見えないだけで、実は美術品たちもお客を品評しているのかもしれない。美術館巡りが楽しくなる作品です。


(「ミュージアムへ行こう」4選/文=愛咲優詩)

恐竜が現代に蘇った! 日常は巨大なジュラシックパーク

  • ★★★ Excellent!!!

 化石から恐竜や古生物が蘇った現代日本。ペットとして飼育したり、食用として養殖に挑んだり、動物園や水族館では飼育員が頭を悩ませたり、古生物と生きる人々の営みがロマンに溢れます。

 最古の恐竜エオラプトル。史上最大の昆虫メガネウラ。海の暴君アノマロカリス。螺旋貝アンモナイト。そして日本が世界に誇る首長竜フタバスズキリュウ!

 太古の地球に生きていた恐竜や古生物が動物園や水族館で観察できて、恐竜牧場で触れあえたり、はたまた古生物を眺めながらお茶を楽しめる古生物カフェなんかも町中にできて、現代の生活に溶け込む古代の生物たちに親しみがわいてきます。

 身近になったとはいっても、まだまだわからないことばかり。研究者や飼育員は日夜彼らの生態調査や実験を続けている。毎日が新発見の連続で、未知を解明する感動に満ちている。それもまた古代のロマンだ!

 恐竜を前にすれば子供も大人も瞳を輝かせ、その雄大さに魅せられる。世界で一番古くて世界で一番新しい隣人との日常に好奇心がかきたてられます。


(「ミュージアムへ行こう」4選/文=愛咲優詩)