名画には魂が宿る! "見える"学芸員の美術館奮闘劇

 宿木美術館に展示された美術品には魂が宿っている。この美術館で働く条件は、"見える人"であること。作品に宿った魂と対話できる特殊な才能を持った学芸員・本郷司が、毎回、美術品の魂たちに振り回されるドタバタ騒動が愉快でした。

 いつも本郷をからかう美女の『モナ・リサ』、大声で騒がしい『ムンタの叫び』、頑固者の『学者の肖像』など、美術品にはそれぞれ個性的な魂が宿っている。美術館を逃げ出してしまった魂を探し回ったり、ボイコットをするレプリカたちを説得したりと、彼らのために本郷は奔走する。

 毎日のように事件や厄介事を巻き起こす彼らだが、気分次第でファッションを楽しんだり、気に入った人間に寄り添ったりと、人間味があって枠にはまらない自由奔放さが、いかにも芸術作品らしい。

 私たちが美術鑑賞をしている際にも見えないだけで、実は美術品たちもお客を品評しているのかもしれない。美術館巡りが楽しくなる作品です。


(「ミュージアムへ行こう」4選/文=愛咲優詩)

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