仕事でも恋愛でも何でも、人生というのは思い通りにいかないもの。過酷な現実に打ち破れ、ときには逃げ出したくなりもする。だけれどずっと負けっぱなしなままは悔しいじゃないか! 諦めずに立ち上がり、挑戦を繰り返すからこそ目的が叶ったときの達成感や充実感はひとしお。人生の困難に打ち勝つことで人間は成長できる。そして小説とは人間の成長の物語だと思います。今回は人間ドラマとミステリーをテーマにした自主企画から、自分の夢や大切な人のために困難に挑む人たちの物語を取り上げてみました。みなさんが人生の困難にぶつかったとき、それを乗り越えるためのヒントやきっかけになればと思います。

ピックアップ

殺人鬼を処刑せよ! 命をかけた推理デスゲーム!

  • ★★★ Excellent!!!

 セクハラ上司を殴って職場を解雇された翌日。目を覚ました黒日テイシは、出口のない館に監禁されていた。館には自分と同じ境遇の人間が九人。生存者の中に首謀者が潜み、殺人を行うと宣言した。館から生きて脱出するには30日間を生き延びるか、首謀者を特定し処刑すること。生き残りをかけたデスゲームがはじまる。

 館に集められた十人は、銀行員、探偵、法学生など職業も年齢もバラバラな男女たち。その中にはテイシの幼馴染・赤富士マコがいた。素直すぎるマコを守るため、スタンドプレーをとったテイシは危険人物として周囲に認識されて窮地に陥ってしまう。

 生存者は一癖も二癖もあるくせ者揃い。優しそうな顔も、怯えた顔も、怒っている顔も、すべてが演技かも知れない。生き残るために協力と裏切りを繰り返し、したたかに知恵を巡らせる十人の騙し合いが手に汗握ります。

 テイシはマコを守れるのか? そして殺人トリックは? 首謀者の正体は? 殺し合いと騙し合いのデスゲーム×ミステリーです。


(「注目の自主企画から選んだ作品」4選/文=愛咲優詩)

共に行こう頂上へ! 追放監督と弱小サッカーチームの奇跡

  • ★★★ Excellent!!!

 サッカーJ1の名門チームの監督でありながら、経営陣と対立して追放された主人公・清川清彦。彼が新監督として就任した「多喜城FC」は、予算不足で設備もスタッフも足りない、選手はルーズで意識も低い底辺チームだった! そんな弱小選手たちとJ3リーグ優勝を目指してボールを追いかけるストーリーに胸が熱くなります。

 チームの惨状を嘆いた清川は自分のツテでトレーナーや往年の名選手を集め、チームの改革を断行する。環境が整い、練習内容も本格的になるにつれて元からいた選手たちにもプロ意識が芽生え、次第にスポンサーやサポーターの期待を集めるチームになっていく成長ぶりが頼もしいです。

 清川だけでなく、選手ひとりひとりのバックストーリーにもサッカーにかける情熱や人生が描かれ、人間ドラマが心を揺さぶります。

 そして迎えたJ3リーグ開幕、蘇った弱小チームの怒涛の快進撃が始まる! 果たして清川と選手の夢は叶うのか! 小さな街のサッカーチームが起こす奇跡を是非ご覧あれ!


(「注目の自主企画から選んだ作品」4選/文=愛咲優詩)

商店街に泊まりませんか? 商店街再生ゲストハウス計画

  • ★★★ Excellent!!!

 どこにでもある田舎の寂れた商店街。その一角で大衆食堂を営む原田翔太の元に、ある日、サイクリングジャージ姿の女性・大森なずながやってくる。自転車で全国を旅して各地の風景や町並みを紹介する彼女のSNSには、たくさんのフォロワーがいて、彼女が訪れた街は活気に溢れ、人が行き交うようになるというインフルエンサーだった!

 なずなの拡散力はすさまじく、お店をネットに紹介したら、夕方にはお客が殺到して大繁盛。翔太もなずなの言う通り、ちょっとした工夫をしたことで、新しいお客さんも訪れるようになる。

 商店街の住人は誰もが顔見知りで家族同然、そんな人々に温かく迎えられて感激したなずなは、商店街に泊まれるゲストハウスを作り、観光客をもてなすアイデアを提案する……。

 エネルギッシュなお年寄りの人情味あふれる姿が元気づけられます。まだまだ計画は始動したばかり、果たしてゲストハウスは成功するのか? 旅と商店街の魅力がつまった作品です。


(「注目の自主企画から選んだ作品」4選/文=愛咲優詩)

あの味をもう一度! キッチンカーは夢を乗せて走る!

  • ★★★ Excellent!!!

 瀬戸菊は、老夫婦が営む昔ながらの弁当屋「ころりん」のおにぎりに惚れ込み、パートとして働いていた。しかし経営難から「ころりん」は廃業。菊は、キッチンカーでの「ころりん」の復活を夢見て、資金を貯めるためにスーパーで働きはじめる。一方、ビジネスマンとして出世街道を歩むも仕事に意欲を見いだせない男・島津は、そんな菊の姿に憧れ、そっと手を貸すことに……。

 潰れてしまった「ころりん」の思い出を引きずって立ち直れない菊と、励ますつもりが菊を傷つけてしまう島津のすれ違いがもどかしいです。

 自分は良かれと思っていても、相手にとっては「余計なお節介」や「ありがた迷惑」と思われてしまう。みなさんにも思い当たる経験があるのではないでしょうか。せっかくの善意も押し付けではいけないし、受け取り方次第でもあります。

 菊もひとりで抱え込まず、クラウドファンディングという手段を取ることで、たくさんの人々の善意と出会い、夢を叶えます。

 仕事や人間関係がうまくいかないと周囲が敵ばかりに見えてしまいがち。ですが、見えないだけで世の中は善意で満ちています。善意がつまった菊のおにぎりが食べたくなる心温まるヒューマンストーリーです。


(「注目の自主企画から選んだ作品」4選/文=愛咲優詩)