1月上旬から今にまで続く大雪の影響で、いろいろ辛い感じの外出系フリーライターおじさんです。ちなみにこの原稿も、喫茶店まで電車通勤して書いてたりするのですが。どんな雪にも負けることなくお店を開けてくださる方々、本当にありがとうございます。
今月は『“粋”のいいネタ! 4選』と題しまして、私が独断で「粋だねぇ~」と感じました4作品をご紹介させていただきます。みなさまにもぜひとも出逢い、感じていただきたく思いまする。
などと余計なことを書き連ねるのは無粋の極みですね。ささっと畳んでご紹介と参りましょうー。

ピックアップ

弁えた貴族たちが演じる無二の恋愛ドラマ!

  • ★★★ Excellent!!!

伯爵位の継承と結婚を同時に行え。そんな嫌がらせも、皇国の第二皇子が仕組めば勅命となる。リカルド・エルトナはわずか二ヶ月の婚約期間を経て没落寸前のセイデナル男爵家の娘オリビアを娶った。しかし妻は、初めての夜を共に過ごすことなく、互いの幸せのためにと言い残して魔術院へ行ってしまって――

目を奪われたのはすっきり濃やかな世界観と、それを描き出す著者さんの筆力! たった600字弱で最低限の物語設定と、そこに生きる貴族の常識や有り様をさくりと伝え、その貴族であるリカルドさんの人となりを表わしていて。読んでいる側は一気に物語へ引き込まれずにいられません。怖ろしく見事な導入ですねぇ。

そしてオリビアさんというヒロインの破壊力ですよ! この人が引っ繰り返すどんでんの勢いは凄くて、しかもおもしろい! しかもです。そこに繊細な心の機微が織り込まれているのですからたまりません。キャラの立ち方が半端ないんです。

見せる構成に魅せる展開が実に小気味よく、粋。恋愛ドラマ好きな方はもちろん、物語を構成まで読み込みたい方にもオススメです。


(「“粋”のいいネタ!」4選/文=髙橋 剛)

153年の時を越え――新撰組、小野田家に立つ!

  • ★★★ Excellent!!!

新撰組がやってきた! 彼らが存在していた時代から153年後の小野田家に。どうやらタイムリープ現象によるらしいのだが……とにかく、彼らを過去へ帰さなければと決める小野田家。かくて歴史に残せぬ邂逅記が幕を開けるのだった。

基本的にゆるやかな異文化コミュニケーションもので、新撰組に詳しくない方でも安心して楽しめる内容となっているのもオススメポイントですが、設定がしっかり構築されている点は見逃せません。

中でも新撰組の身柄を預かる小野田家、実在する小野派一刀流の道場を営んでいる設定がよく効いているのです。それがあればこそ、小野田家の面々の思考や行動に厚みと説得力を持たせられているのですよね。歴史ものは史実をどう調理するかが見せ所となりますが、異邦人サイドではなく、現地人サイドを出汁にして、しかもおいしくできている作品となると希なものです。

そして新撰組の刀なき日常(彼らにとっては非日常ですが)という、これもなかなかない切り口でおもしろい!

ネタの切り口と確かな舞台設定が光る、粋な逆タイムスリップ物語、推しです!


(「“粋”のいいネタ!」4選/文=髙橋 剛)

解いて説きます! 物語に使われたすべての「漢字」!

  • ★★★ Excellent!!!

著作権の消失した作品と、著作権所有者が自由に閲覧してかまわないとした作品を集め、インターネット上で公開している『青空文庫』。こちらはその中から選んだ作品の漢字すべてにルビを振り、さらに常用漢字を伏せ字にして問題化、さらに解説をつけた作品。

なにがすごいかと言いますと、原文に振っていないルビも字を伏せるのももちろん解説も、全部著者さんの手作業なのですよ! しかもこの集中力と根気をただただ結果として公開し続けておられる姿勢、粋じゃあありませんか。

そしてこちらの作品、常用漢字の学習教材としての高い完成度はもちろんなのですが、普段何気なく読んでいる文章にどれほど多くの漢字が使われているものかを実感できるのもすばらしい。文章書きとしての意識も刺激されるのですよね。漢字をもっと大事に使おうって。私などは結構漢字を“ひらく”ほうなのでなおさらです。

当たり前のものから当たり前じゃないことを見つけて識る。そんな最高の出遭いをくれる問題集であり、解説集です。


(「“粋”のいいネタ!」4選/文=髙橋 剛)

生主→実況者→VTuber! 顛末も内実も全部語る赤裸々エッセイ!

  • ★★★ Excellent!!!

これまでニコ生主やゲーム実況、朗読動画投稿者として活動してきた彼は、YouTubeのおすすめに表示されたVTuber動画を見て思った。「あ、なろう」。そして彼は始めるのだ。持ち味である“小説”を生かした、言うなれば執筆系VTuberとなる活動を。

というわけで、こちらは著者さんのVTuberデビューを巡る顛末記です。思い立って行動へ出て、ひとつひとつ手探りで問題へ当たっていく様も興味深いのですが、そこへ書き込まれた心情や思惑がおもしろいんですよ。著者さんの覚悟――ご自身をネタに書き抜くんだという気概とも言えますね――で実現した赤裸々さによって、ただの実話が上質のドキュメンタリーに仕上がっていて。

舞台裏のお話はそれだけでおもしろいものですが、読み物へと昇華するにはドラマ性という名の赤裸々さが不可欠。ご自身をしっかり晒してネタにできる心意気があればこそ、このエッセイには粋が光っているのです!

すでにチャンネルは開設していますので(作品の紹介文にURLも載っています)、ぜひ併せてご覧くださいまし!


(「“粋”のいいネタ!」4選/文=髙橋 剛)