弁えた貴族たちが演じる無二の恋愛ドラマ!

伯爵位の継承と結婚を同時に行え。そんな嫌がらせも、皇国の第二皇子が仕組めば勅命となる。リカルド・エルトナはわずか二ヶ月の婚約期間を経て没落寸前のセイデナル男爵家の娘オリビアを娶った。しかし妻は、初めての夜を共に過ごすことなく、互いの幸せのためにと言い残して魔術院へ行ってしまって――

目を奪われたのはすっきり濃やかな世界観と、それを描き出す著者さんの筆力! たった600字弱で最低限の物語設定と、そこに生きる貴族の常識や有り様をさくりと伝え、その貴族であるリカルドさんの人となりを表わしていて。読んでいる側は一気に物語へ引き込まれずにいられません。怖ろしく見事な導入ですねぇ。

そしてオリビアさんというヒロインの破壊力ですよ! この人が引っ繰り返すどんでんの勢いは凄くて、しかもおもしろい! しかもです。そこに繊細な心の機微が織り込まれているのですからたまりません。キャラの立ち方が半端ないんです。

見せる構成に魅せる展開が実に小気味よく、粋。恋愛ドラマ好きな方はもちろん、物語を構成まで読み込みたい方にもオススメです。


(「“粋”のいいネタ!」4選/文=髙橋 剛)