近くて遠い不思議な存在。今回は「兄弟姉妹」が登場する作品のレビューをご紹介します。両親とはまた違う絆で結ばれたこの家族は、婚姻で増えたり、その関係性が占いになったりもしています。双子には特別な共感があるというエピソードも……。改めて考えると、不思議な間柄ですよね。そうそう、「三国志」にあるように、盃を交わすことで増える義兄弟というものも。
某人気作に兄妹兄弟多くない……? と思ったから探してみましたというのはここだけの話、ジャンル不問でご紹介しております。
※シリーズ作品は、是非最初からもどうぞ!

ピックアップ

雪と不思議な三人兄妹の話

  • ★★★ Excellent!!!

雪が何故か降る世界観と外に出てはいけないと言われる、主人公の弥生の正体が、タイトル通りなんじゃないかなぁと思いました。

不思議な季節の作品だと思います。

滑らかに典雅な日本語の、何とも魅力的な美しさ。ぜひ味わって欲しい!

  • ★★★ Excellent!!!

第14話を読み終えた段階でのレビューです。

美しい瑞獣と帝との間に生まれたそれは麗しい兄君と、人間である皇后と帝に生まれた弟君。ある理由から、弟君が今上帝として立ち、兄君はひっそりと身を隠すように過ごしています。瑞獣を母とする兄君の美しさに、主上は深く心を惑わされ……そんな、なんとも雅に妖しく美しい世界を描いた物語です。
ぜひ味わっていただきたいのが、この物語の語られる言葉の美しさです。『源氏物語』さながらの世界が、なんとも滑らかに典雅な日本語で綴られています。古文を思わせる語り口でありながらするすると脳に流れ込み、細やかに美しい情景が目の前に描き出されていく心地良さ。格調ある淫靡さと相まって大変独特な魅力に満ちています。

物語はまだ序盤ですが、典雅な妖しさに満ちた美しい世界をたっぷり楽しませていただきたいと思います。

血の運命に翻弄される、双子の王子の物語。

  • ★★★ Excellent!!!

燃えるような赤毛、赤い瞳、尖った耳を持ち、戦いを好む勇猛な魔族ウーレンの王・ギルトラント。銀髪碧眼、平和を好む慈愛の魔族エーデムの王の妹・フロル。二人の結婚は政略ではなく愛によるものだったが、二人の子ども達に引き継がれた血は、彼らの運命を引き裂くものだった。
王位継承権をもつ双子の兄・セルディーン(セルディ)には、エーデム族の銀髪碧眼、弟・アルヴィラント(アルヴィ)には、ウーレン・レッドと称えられる赤毛赤眼が表れていた。自身の容姿と民の期待との違いに苦悩するセルディに、父王はかける言葉がなかった。やがて、双子の運命の車輪は、彼らが思いもよらなかった方向へと回り始める。


『エーデムリング物語』の続編です。前作では主人公の一人だったギルトラントの息子たちが中心です。フロルもメルロイも登場しています。
物語を通じて圧巻だったのは、自身の容姿と相反する気質、二つの魔族と人間との間で複雑に絡み合った、王子達のアイデンティティを巡る葛藤でした。双子の王子が引き裂かれた後、それぞれの立場が変わり、出会った人々の影響や経験を経て内面が変化していく過程が、よく理解できました。

「血によって束縛され、貶められている人々を解放する」為に戦っていたはずのセルディが、最終的には、最も自身の「血のもたらす運命」に支配されていたようなのが、哀しかったです。
美しい極上のハイファンタジーです。

ホームレスのはずがイケメン兄弟に拾われて

  • ★★★ Excellent!!!

21歳になる漫画家志望の女の子綺羅。彼女は分け合って新宿の空の下、ホームレスになる羽目に……

えっ、何この絶望的な出だし。そう思って読み進めるとすぐに状況が一転、親切でしかもイケメンな……イケメンな兄弟に拾われます!
人懐っこくて癒し系の弟、メグル君。厳しい物言いをするけど、そこにはちゃんとした優しさのあるお兄さんのカオルさん。しかもお兄さんのカオルさんが実はプロの漫画家で、綺羅をアシスタントとして家に置いてくれることに。
こうして二人のイケメンに囲まれた、新たな生活がスタートするわけです。
どん底にいたはずが、誰もが羨む展開に。シンデレラもビックリの人生逆転劇です。

時にカオルさんの優しさに惹かれ、時に無邪気なメグル君に翻弄されながら、漫画を書いていく綺羅。物語の途中で彼女の漫画について触れられますが、自分の作品とどう向き合っていくかが描かれていて、そこに胸を撃たれました。
イケメン兄弟に翻弄されてドキドキさせられるだけではなく、物語の書き手として大事な事を教えてもらった気がします。

イケメンとの同居ものが好きという方は是非読んで、兄弟の間でドキドキするような生活を送るキラの様子を堪能してみてください。