夏に短編特集をやらせていただきましたので、秋は当然ながら長編でしょ! ということで10万字以上の作品を4本チョイスさせていただきました。
短編の醍醐味が鮮烈さであるのに対して、長編の醍醐味は色濃さ。読み込ませることを前提に練られた物語からは、文章のクセなどを含む著者さんの筆のにおいが漂い出すものです。迷ったときはいいにおいのするほうへ……ではありませんが、実にいいにおいのする作品と巡り会えました。
ですのでみなさまも、芳香に浸りつつ秋の夜長を思いっきりぶっ飛ばしていただけましたら幸いですー。

ピックアップ

押し迫る運命に少女は抗い、生きる!

  • ★★★ Excellent!!!

土雲族の中で“災いの子”と呼ばれる娘セイレンは、双子の姉が犯した罪をかぶせられて殺されかけるが、とある国の王たる雄日子の“守り人”となることで生き長らえる。
しかし雄日子は大和朝廷より反逆人と断定されており、その命を狙われていた。

大和朝とまつろわぬ民が混在した日本の古代をモチーフにしているのも目新しくて興味深いのですが、やはり歴史ものには不可欠なもの――しっかり組まれた重厚なストーリーと、それを支える緻密な世界設定を読ませてくれるところが最高ですね。

歴史には改変してはいけない軸がありますから、それに障らず、しかもおもしろいお話を作るというのは非常に難しいものです。
だからこそ、それができている歴史ものには必然性が宿り、語り部たるキャラクターも輝くんです。

物語あり、設定あり、キャラクターあり。三位一体の読み応えを、あなたもその目で味わってくださいませ!

(秋こそガッツリ!長編4選!/文=髙橋 剛)

少女たちは出逢い、論理をもって世界と戦う

  • ★★★ Excellent!!!

小学6年生に進級した八葉ハツルは親友と分かたれたクラス替え、その「正しさ」について疑問を抱いた。彼女は親友と共に過ごす時間を取り戻すべく動き出し――“論理”になることを志す転校生、士牙獅子トワと出逢った。

人が死なない「日常の謎」ジャンルはなによりもキャラクター性がものを言いますが、こちらの作品にもしっかりといますよキャラクター! 
とにかくクールなトワさんは冷静論理系で、感情的で突っ走るけど、その根底に揺らぎない観察眼を持つハツルさんは情動論理系。
成り立ちは異なりますが、どちらも論理という武器を持っているのは非常におもしろいですね。

そして、こんなふたりを軸にした物語は、ごく小さなきっかけをこの上もなくドラマチックに展開してしまうわけです。
このあたりはまさに、キャラの個性と作品テーマが据わっていればこそ。

世の中の矛盾や大人の都合を子ども目線でぶった斬る様には、皮肉なカタルシスを感じずにいられません。
日常の謎好きな方は迷わずご一読あれー。

(秋こそガッツリ!長編4選!/文=髙橋 剛)

家庭教師(護衛)のお相手は姫(王子)でした!

  • ★★★ Excellent!!!

16歳の女子だというせいで良家の家庭教師になり損ない続けているアレクシア・フォン・ヴォルフヤークトは、5回目の就職に失敗した先で先王の遺児であるジュリア・オブ・ルクトニアを救うことに。
果たして彼女の家庭教師となったアレクシアだが、ジュリアはなんと、姫を騙る王子様だった!

強い、でかい、あきらめがいい、三拍子そろったアレクシアさんのキャラクターがとにかく秀逸ですね! 
セリフじゃなくて多彩な地の文で綴られる彼女の有様は実にわかりやすく、そして軽妙です。
構成ももちろんなんですけど、この文章力は見事ですねぇ。その文章のおかげさまでするーっと読める、意外なほど濃い悲喜劇は極上のひと言ですよ。

さらに初っぱなから俺様全開なジュリアさん、すばらしくおかしいです。
アレクシアさんとの衝突がおかしくて、少しずつ縮まっていく距離が愛しくて……キャラの個性の輪郭をここまで太く引ける造形力は本当に希有なものです。
読み手の方にも書き手の方にもおすすめいたします!

(秋こそガッツリ!長編4選!/文=髙橋 剛)

毎日がバイオレンス! 底辺の意味を思い知れ!

  • ★★★ Excellent!!!

彫刻刀で刺された被害者にも関わらず、悪者にされてまともな進学の道を断たれた主人公。
居住区たる埼玉県から追われる形で東京都内の工業高校へ進学した彼は、そこで「真の底辺」を見る!

最初に言っておきます。普通に暮らしてらっしゃるみなさまには信じられないことが多々起きる本作ですが、オークやゴブリン(そこそこ以上に比喩ならず)は本当にいますし、人の頭はよく弾むものなのです。

まあ、細かいネタ(?)は本編で確認していただくとしまして……
エッセイというのは著者さんの日常を綴ったリアルさが読みどころになりますが、そのリアルの質が普通とちがいすぎてファンタジーに至っているのが注目ポイント。

当たり障りない部分を引用させていただきますと、高校が舞台の青春エッセイで『半殺しって無理ゲーですよね?』ですからね。バイオレンスが過ぎます!

しかし、だからこそ異世界を垣間見ているようなおもしろさもあって、読み出すと止まらないんですよねぇ。
日常という名の不条理、そのギラついたリアリティをお楽しみください。

(秋こそガッツリ!長編4選!/文=髙橋 剛)