今回の新作ピックアップ4本は「リアリティ」をテーマに選ばせていただきました。
リアリティには文字通りの現実味のほか、物語的な現実感も含まれます。現実味を出すには事象をご自身の観点から捉えて文章で過不足なく説明する必要がありますし、現実感を出すには設定が著者の都合ならぬ必然性をもって練られている必要があります。どちらも文章作品には重要な要素となりますので(毎度同じようなことを言っていて申し訳ありませんが……)、よろしければその点にもご注目いただきつつ、作品をお楽しみくださいませー。

ピックアップ

政略結婚から始まる、ふわ甘ボーイミーツガール

  • ★★★ Excellent!!!

時のうつろいとともに、自らの力を顕わす血の薄まりに悩む妖怪たち。
そのような状況の中、彼らはなにかのはずみで生まれ出でる“先祖返り”を求め、そして彼ら同士の婚姻によって血と力とを繋ぎ止めようとしていた――。

というわけで。このお話は“先祖返り”した鬼の少年と少女がしくまれたお見合いの場で出逢い、政略結婚させられないため結託するという内容です。
少年は鬼ながらごく普通の少年で、少女は鬼のお嬢様ながら芯が強くて礼儀正しくて。設定はファンタジーなのですが、それはあくまで彩りなんですよね。
メインストーリーはあくまでもふたりの心情と行動に焦点があてられていて、「別れる」ためにがんばってるはずなのにその関係性はどんどん近づいていく……雰囲気はやわらかく、それでいて気持ちよくまっすぐな恋愛譚が綴られていくわけですよ! 

タグの「きっとラブ」はフェイクです。むしろ「王道ラブ」なお話ですので、ほんわり甘いの好きな方はぜひともご一読を。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

少女を襲う悲劇! しかして彼女は生き抜くことを誓う!

  • ★★★ Excellent!!!

志田キヨミ(14歳女子)の頭にハゲが出現! 
艱難ありありな学校生活と辛苦に満ちた私生活がもたらしたストレス性円形脱毛症に、そっと死を決意したりもした彼女だが、直径1・5センチの秘密を隠し通して生きることを決意。孤独な戦いを開始するのだった。

いや、実に明快な冒頭部にやられましたね。キヨミさんには申し訳ないのですが、最高にキャッチーです。
そして続く第2話、出だしが「学校とはサファリパークに似ている」ですからね。
彼女の置かれた状況がどれほど過酷なものかがズバっと思い知らされます。

悲喜劇って相当難しいんですが、ネタも構成も一文のインパクトも、この上ない決まり具合でした。著者さん、うまいですねぇ。
薄暗さを醸し出しつつ、きちんと笑わせてくれるんです。そして最後にキヨミさん自身が笑ってくれるエンディングがまたうれしい! 

完結済みの33331文字、読んで損なしの一作ですよー。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

残業から始まる!? 山本晶さん(24歳OL)の恋!!

  • ★★★ Excellent!!!

本日、過酷な残業が確定してしまったごく普通の営業事務OLであるところの山本晶。
彼女は同期から宿直を押しつけられた新人SE男子、玉城にアクシデントで押し倒されてしまった! 
何事もなく理由にも納得、帰路につく彼女だったが、その心は揺れに揺れて……!

年下男子との恋が始まっちゃうらしき山本さんのお話なのですが、注目していただきたいのは文章のノリのよさ。
物語なんですけどエッセイ風味も感じられて、それがまたリアリティを増してるんですよ。

そしてなにより玉城君! 
実家が営む古武術道場の跡取りを押しつけられそうになってる彼。
宿直のこともそうなんですが、そういう押しに弱そうな感じ? 
でも実際は腕っ節強くて責任感も強くて……あざといこと言えば、読者の好感度をちゃんとさらえるキャラ。

先輩としていろいろちゃんとしなくちゃって思いつつ、ついときめいちゃう晶さんも応援したくなる主人公像で実によしなので、キャラ好きな方は要確認ですよー。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

これはひとつの理想を描いたオタティック・ラブロマンス!

  • ★★★ Excellent!!!

華やかなりしバブル時代の黄昏期、婚約者たちは銃を抱えて突然変異亀の映画を見に有楽町へ向かう。
おそらく同年代な私には「見える」レベルの情景から始まるこのお話、オタクな女子が大学でオタクになった男子とご家族になられる過程を綴ったエッセイです。

地の文の軽妙な語り口に引き込まれ、気づけば12月3日の最新更新分まで読まされていました。
普段は重厚な歴史・時代系の作品を書かれていらっしゃる著者さん、文章力の確かさは折り紙つきですね。

そして現在公開されている旦那様との恋物語がね! はっきり言いますよ、オタ者からしたら理想の恋愛ものなんです。
実際大変なこともあるのでしょうけど、物語に必要なエピソードが実に素敵な形で演出されていて、読んでいる私はただただ悔しい!

また始まったばかりですが、この後おふたりがご家族になられ、お子様もまたエリートオタクになられていく様が描かれる模様。更新を待ちつつ公開分を楽しみましょう。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

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