夏休みは作家デビュー!毎年恒例、高校生限定の文学コンクール!
703 作品
漫画原作者・小説家・シナリオライター。『文豪ストレイドッグス』『汐ノ宮綾音は間違えない。』『水瀬陽夢と本当はこわいクトゥルフ神話』(いずれもKADOKAWA)のコミックス原作を手がける。
「文豪ストレイドッグス」は自らスピンオフ小説を執筆。ほかの著書に小説『ギルドレ』(講談社)がある。
この賞の審査員をつとめることは、私にとってぶっちぎりにエキサイティングな体験でした。そこには「高校生のわりに頑張っている小説好き」なんて生易しい応募者は一人もいませんでした。全員が明日の同業者にしてライバルでした。お世辞を抜きに、率直に、こう思いました。「私は創作で食えている。彼らは食えてない。でも我々のあいだに、そんなに目に見えるほど大きな差があるのだろうか?」と。
受賞者の皆さんに「これからも頑張ってね」なんて温い言葉をかける気にはとてもなりません。何故なら皆さんはすでに、輝く才能の宝石を持っているからです。妬ましさすら感じます。あとは皆さんがその宝石を、どう扱うかだけです。
そして宝石の扱い方を私がどうこう指示することはできません。私にできるのは、ただ願うことだけです。
同業者として、貴方達の本の隣に並んで置かれる日を、今から心待ちにしています。
1992年に読売新聞社入社。事件・事故の取材が長く、横浜支局を経て、社会部で警視庁、労働問題などを担当し、長野支局へ。その後、川崎、釧路、札幌、福島、さいたまなどで計9年余り、地方ニュースのデスクを務め、青森支局長などを経て、今年2月から東京本社教育ネットワーク事務局の活字文化推進会議事務局長兼NIE部長。
高校生たちの想像力の豊かさと若々しさ、文章表現の多彩さやみずみずしさに圧倒されました。大賞や読売新聞社賞だけでなく、奨励賞に選ばれた各作品や、惜しくも選に漏れた作品も、実に読み応えがあり、甲乙を付けがたいものがありました。繊細な感覚や大胆な表現方法の一方で、推敲の不十分さや荒削りな所も、高校生作品の魅力だと思います。若いときにしか紡ぐことができない、今年のすばらしい作品の数々を、カクヨムで読んでいただければと思います。
中央公論新社入社後、文芸ジャンルの書籍編集者として勤務。2014年3月筑波大学社会人大学院にてMBA(経営学修士)取得。2016年3月KADOKAWA入社、カクヨム編集部に配属され、2017年2月より現職。2019年3月よりライトノベルのレコメンドサイト「キミラノ」編集長も兼任。
未曽有の事態が続く中、応募受付開始した当初は今年は創作活動どころではないのではないか、と思っていました。しかし、みなさんの旺盛な創作意欲は、運営の心配など吹き飛ばし、たくさんの作品の応募と応援につながりました。ご参加に深く感謝します。加えて選考が終わった時には、この作品を超えるのは難しいだろうと感じるのですが、翌年には先輩方の上げたハードルを軽々と超える作品が出てくるところにも、高校生の底知れぬ創作力を感じています。参加者のみなさんがこれからも創作活動を続けること、また受賞作品に触れた人が、読書の楽しみや創作活動に目覚めることを祈っています。
女遊びに明け暮れるしがない物書き、喇叭八録(らっぱはちろく)は、生きる事に飽き、どうせなら最後に女を一人愛してから生涯を終えようと決意する。
そうして町へ出て出会った女が、椿に宿る霊、古山茶の乙女(ふるつばきのおとめ)であった。
インターハイ出場を夢見て、高校三年間懸けてバレーボールに打ち込んでいた菜乃やそのチームメイト。
2020年、夏。インターハイ中止が決定し、菜乃たち三年生が下した決断。
先輩の気持ちに応えた後輩たちがとった行動とは?
ボールを追いかけた三年間の集大成を発揮させるはずだった夏の、物語。
高校生活最大の目標がコロナ禍で突然、消えうせてしまった無念さ、どうにもできないやるせなさは今年、多くの3年生が感じたと思います。歴史に残る不合理の中、自分を見つめ直す主人公に動かされました。
鈴木稔(読売新聞東京本社 活字文化推進会議 事務局長)
現代社会設定では成立させるのが難しいボーイミーツガールの冒険譚を、夜中に眠れない女の子が神様に会っていく、という形で実現した発想が新しかったです。長編でも読んでみたいと思わされました。
近未来ドーム世界での「園芸」というモチーフの面白さと、最初は無関係だった二人が、夏休みに植物を育てることを通じて関係性が培われ、最後に自分たちの思いを自覚して結末へと導かれていく流れが良い作品でした。
少しいびつな「家族」のひと時を切り取った作品です。著者の比喩表現能力の高さ、随所に見られるこまやかな感情表現の見事さに舌を巻きました。主人公の日常を鮮やかに描きだしています。
プログラミングに根差した魔法文法、文脈を用いて人気ジャンルである「タイムリープ」に挑んだ意欲作です。発想に新規性を感じ、登場人物たちがどうなってしまうのかが大変気になりました。
高校生の持っている自意識をとりつくろわずに素直に書けていて、物語としても成立している作品です。途中のリアリティのある描写から、真実味を感じさせるオチへと繋げるギミックに高い技術力を感じました。
高校生のみなさま、多数のご応募ありがとうございました。
「【高校生対象】文学はキミの友達。「カクヨム甲子園2020」【ロングストーリー部門】」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
選 評
物語として完成度が非常に高い作品でした。時代性のある世界観や情景を的確に描く筆力もさることながら、キャラクター造詣が際立っています。「人でなし」の主人公が体温を持った人として感じられるからこそ、作品の成り行きが不思議な納得感をもって迫ってくる、稀有な作品と高く評価しました。