夏休みは作家デビュー!毎年恒例、高校生限定の文学コンクール!
1,230 作品
漫画原作者・小説家・シナリオライター。『文豪ストレイドッグス』『汐ノ宮綾音は間違えない。』『水瀬陽夢と本当はこわいクトゥルフ神話』(いずれもKADOKAWA)のコミックス原作を手がける。
「文豪ストレイドッグス」は自らスピンオフ小説を執筆。ほかの著書に小説『ギルドレ』(講談社)がある。
この賞の審査員をつとめることは、私にとってぶっちぎりにエキサイティングな体験でした。そこには「高校生のわりに頑張っている小説好き」なんて生易しい応募者は一人もいませんでした。全員が明日の同業者にしてライバルでした。お世辞を抜きに、率直に、こう思いました。「私は創作で食えている。彼らは食えてない。でも我々のあいだに、そんなに目に見えるほど大きな差があるのだろうか?」と。
受賞者の皆さんに「これからも頑張ってね」なんて温い言葉をかける気にはとてもなりません。何故なら皆さんはすでに、輝く才能の宝石を持っているからです。妬ましさすら感じます。あとは皆さんがその宝石を、どう扱うかだけです。
そして宝石の扱い方を私がどうこう指示することはできません。私にできるのは、ただ願うことだけです。
同業者として、貴方達の本の隣に並んで置かれる日を、今から心待ちにしています。
1992年に読売新聞社入社。事件・事故の取材が長く、横浜支局を経て、社会部で警視庁、労働問題などを担当し、長野支局へ。その後、川崎、釧路、札幌、福島、さいたまなどで計9年余り、地方ニュースのデスクを務め、青森支局長などを経て、今年2月から東京本社教育ネットワーク事務局の活字文化推進会議事務局長兼NIE部長。
高校生たちの想像力の豊かさと若々しさ、文章表現の多彩さやみずみずしさに圧倒されました。大賞や読売新聞社賞だけでなく、奨励賞に選ばれた各作品や、惜しくも選に漏れた作品も、実に読み応えがあり、甲乙を付けがたいものがありました。繊細な感覚や大胆な表現方法の一方で、推敲の不十分さや荒削りな所も、高校生作品の魅力だと思います。若いときにしか紡ぐことができない、今年のすばらしい作品の数々を、カクヨムで読んでいただければと思います。
中央公論新社入社後、文芸ジャンルの書籍編集者として勤務。2014年3月筑波大学社会人大学院にてMBA(経営学修士)取得。2016年3月KADOKAWA入社、カクヨム編集部に配属され、2017年2月より現職。2019年3月よりライトノベルのレコメンドサイト「キミラノ」編集長も兼任。
未曽有の事態が続く中、応募受付開始した当初は今年は創作活動どころではないのではないか、と思っていました。しかし、みなさんの旺盛な創作意欲は、運営の心配など吹き飛ばし、たくさんの作品の応募と応援につながりました。ご参加に深く感謝します。加えて選考が終わった時には、この作品を超えるのは難しいだろうと感じるのですが、翌年には先輩方の上げたハードルを軽々と超える作品が出てくるところにも、高校生の底知れぬ創作力を感じています。参加者のみなさんがこれからも創作活動を続けること、また受賞作品に触れた人が、読書の楽しみや創作活動に目覚めることを祈っています。
吹き上げる風に乗って連れて行って。君が行ったことのないところまで。
三月。
キミエは幼馴染み達と共に、今はもう廃校となった小学校に集まった。二分の一成人式の後で埋めたタイムカプセルを、十年ぶりに掘り返すためだ。
忘れがたい人が埋めたカプセルの蓋を開けた時、キミエは何をみつけ何を思うのか?
幼心のまだ名前のない感情を、ショパンの調べと共に贈る物語。
コンプレックスや辛い体験を乗り越え、ひかれ合う2人のひたむきな姿がそれぞれ丁寧に描かれており、応援したくなります。詩的で美しいストーリーの余韻が、読み終えた後も心に残りました。
鈴木稔(読売新聞東京本社 活字文化推進会議 事務局長)
ファンタジックな世界設定が、作品のテーマやオチにきちんと生かされていて、読ませる物語になっていました。キャラクターの扱い方にも工夫が見られて、今回は語られなかったキャラクターにも興味がわきました。
ディストピアで生きるカップルの、ほのぼのとした描写に純愛ものかと思いながら読むと、意外な結末に驚きました。伏線もきちんと張られています。自分を騙しながら書くことは非常に難しいのですが、それをこなしています。
動物を主人公にしながら、おじいちゃんが自分を呼ぶときの名前で状態がわかるという部分で、一人と一匹の関係性が伝わってきました。結末に賛否両論ありましたが、それだけ登場人物たちに強い思い入れを持たせられた作品でした。
子供の持つ無邪気な残酷性や、社会人になってからは社会に飲み込まれてしまうのを拒む気持ちやガス抜きという側面を「なめくじに塩をかける」という行為で描き出したところがすごい作品です。
大人でも考えさせられる小説論に惹かれました。また比喩表現とキャラクターの2つが良く出来ていて、主人公の境遇にとても共感しました。家族とのやりとりの描写がうまく展開されており、非常に引き込まれます。
高校生のみなさま、多数のご応募ありがとうございました。
「【高校生対象】文学はキミの友達。「カクヨム甲子園2020」【ショートストーリー部門】」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
選 評
考え抜かれた伏線や構成が4000字という短い作品の中で、見事につながった作品でした。すべての描写に意味があり、著者は「物語る」ということの本質を理解して、コントロールしているのだと感じます。読み終えたときの余韻も見事でした。ぜひ審査委員と同じ驚きを感じてほしいです。