やさしい語り口で始まりながら、読んでいるうちに自然と胸の奥に触れてくる童話でした。身近な発想を使っているのに、読み手それぞれの体験や感情にすっと重なるのが印象的です。何かを「なくす」ことで楽になれると思ってしまう気持ちと、その先にある違和感が、説明しすぎず描かれていて、静かに考えさせられました。重たい言葉で訴えるのではなく、読み終えたあとに自分の感情をそっと見つめ直したくなる余韻があります。大人が読んでも、子どもが読んでも、それぞれ違う受け取り方ができそうな一編だと感じました。
もっと見る