結び
突然のカクヨム休止から、約半月が経ちました。その節は、ご心配をおかけしてすみませんでした。一か月の休止宣言でしたが、AI生成作品大量投稿者に対する運営の措置があり、AI生成作品への今後のスタンスがある程度明瞭にされましたので、いったんここで現在の心境を書き記しておきたいと思います。
発端となったのは、AI生成作品大量投稿者によるランキング独占行為への憤り、そのランキングを支える読み専読者に対する失望からでした。元々、私はAIというテクノロジーに対して一人の技術者として強い興味があり、創作活動におけるAI利用についても品質向上のために使えるところは使っていきたいという考え方でした。ただ、創作物にAIを利用するなど許容できないという意見があることも理解しており、今は過渡期なのかもしれないけれど、いずれそのような創作も一つの手法と認められていくのでは、という少し楽観的な思いも持っていました。
今回の出来事は、それを、リワードを得たいとかランキングを駆けあがりたいだとか、私利私欲のために粗製濫造をするという誤った利用をされてしまい、反AI利用の方の反感を大きく買ってしまった出来事であると私は思っています。
それによって、各所でそれぞれの立場から不毛な言い争いがあったり、運営が動かないなら自分も大量投稿して運営を動かすなんて声が聞こえてくることもありました。AIという存在に、あまりに深く入れ込み過ぎていたのかもしれません。まるで自分自身が責められているような気持ちになってしまい、ちょっと耐え切れなくなり、カクヨム休止に至ったのでした。
私のお気持ち表明はそこまでとして、まずはAI生成作品大量投稿者に対する運営の措置への私見です。規約に違反しているかグレーだったところ、アカウントをBANしたのは、本当に英断だったと思います。タイトルを見た瞬間に分かる、アレな作品がランキング上位を席捲しているのは異常だったと思いますから。
次に、AI生成作品への今後のスタンスがある程度明瞭にされたことについてです。これも良い判断だったと思います。AI本文利用、AI本文一部利用、AI補助利用、この3段階での作品タグ付けが「推奨」されたとのことです。あくまでも「推奨」であるため、個人の良識に任せるところはあると思うのですが、運営からきちんとメッセージが出されたということが重要だと思っています。これでユーザーは、ある程度は安心して作品を投稿できる環境になっていくと思います。
さて、このAI利用のタグ付けですが、拙作にも影響がありますので早速タグ付けを行いました。「AI補助利用」のタグについては、辞書を引いたり、インターネットの情報を参考にするのとどう違うのだろうと思いながらも、AIへの相談が比較的多かったものに対して、自己判断でタグ付けを行いました。
そして、問題というか、私は皆さまに謝らなければならないことがあります。それは「AI本文一部利用」のタグについてです。その定義とは「本文の一部(目安50%未満)がAIによって生成された文章。またはそれらの文章に作者が軽微な修正を加えたもの」とのことです。私が投稿した作品の一部ではありますが、プロットをAIと練り、AIに下書きをしてもらい、それを自分で修正するという方法をとったものがあり、その情報を開示することなく投稿した事実がありました。
アイデアの大半は自分のものであり、下書きについては原型が分からないぐらいに修正をしていたので、正直に申しまして自分で執筆した作品という感覚でおりました。昨今の情勢を鑑みると、これは私の認識が間違っていたと言わざるを得ず、いわば覆面AI作家のようになっており信義に反する行為であったと思います。猛省し以後は、そのようなことがないように努めたいと思います。どの作品に私がAIを大きく利用していたか、ご興味がある方は、私のマイページから覗いてみてください。
暗い話はここまでとして、少し明るい話もしましょう。最近、私にとって金言がありました。「カクヨム金のたまご」のコーナーで、カクヨム公式レビュワーの方が以下のように記されていました。
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伝統芸能で『守破離』という言葉があります。最初は師の教えを守り、次に教えを破り、最後に離れて自分だけの道を作る。AIはパターンをなぞる守は抜群に上手いんですが、新しいアイデアを出したり、個性を身につける破と離は不可能です。仮にそれらしい結果を出力したようにみせても、それは意識してそうしているわけではありません。正しく破と離ができるのは人間の作家だけです。なので人間の作家の皆さん、新しい挑戦をしましょう。これまでにない創造をしましょう。それこそが創作の本質だと思います。そして何より、創作を楽しみましょう。皆さんの熱い創作を待ってます!
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――正しく破と離ができるのは人間の作家だけです。
人とAIの関係について考え続けてきた私ですが、先の言葉は、まさしく私が実感し始めていたことでした。AIから『守』を学び、徐々に『破と離』に移行しつつあるのではないかと感じているところです。
出力された一文単位で見ると、AIから素晴らしい提案があったりします。それは事実です。しかし、それの多くは、人がAIに渡した断片的な情報を集合知により定型的な論理に従って帰結させただけに過ぎず、真の創造性を持つ存在には、いまだ至っていません。
今現在の私の状況について、少し振り返ってみたいと思います。一時期は創作に詰まったら、できたものをAIに読み込ませて相談ということも多かったのですが、AIからの改善提案に対して、確信をもって棄却できることが増えてきました。
まだ形は見えていませんが、新作の長編も極力、人間の力だけで書いています。一部専門的な内容があるため、検索の代わりに使用しているのですが、そこまでにとどめています。AIを通すことで、どこか自分のものではない何かが紛れるような感覚があり、下書きもさせない方がよいという判断からです。
しかし、一概にAIが悪かというと、やはり私はそう思いません。実際、AIに長く触れていたことで、言葉がスムーズに降りてくる場面も多くなり、明らかに執筆技術は向上していると思います。これから小説を書きたいと思っている方にも、自分のコントロールが及ぶ範囲に限っては、AIをどんどん使っていくべきとすすめたいと思っています。AIを利用するかしないかで、上達スピードもかなり違ってくるのではないかとも思っています。
最後に、カクヨム休止の件ですが、無期限に延長しようかと思います。AIうんぬんとは無関係ではありますが、仕事などで落ち着かない状況が続いており、創作活動に本腰を入れられていないということもありますが、本当に自分がAIの影響から脱することができたのか、よく分からないからです。自分が創作を通して一体、何を表現したいのか。それが明確になった時、また顔を出したいと思います。
願わくば、その時がすぐに訪れることを、私は祈っています。
エターナル・プロンプトの片隅で 平手武蔵 @takezoh
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