歌えるよ、きっと――それがきっと『言祝』だった。

歌鳥の民でありながら音痴で、ちっとも上手に歌えない――それゆえに劣等感に苛まれ卑屈になっていたハフリが、空からやってきた少年ソラトとの出会いで変わってゆく。

「わたしのことなんてほうっておけばいいんだよ」

そんな風に言っていたハフリが、自分の意思で選び自分の意思で動いていく。
ソラトの手を取りハフリがやってきた山烏の村で、ハフリはいうなれば変化のための一石だったのだと思う。ひとつの小さな石が水面に投げ込まれ、波紋が広がるように、少しずつ少しずつ周囲を変えていく。



ハフリ、君はちゃんと歌えるよ。
森の外でひとり膝を抱えていたハフリに私は言いたい。歌えるよ、ちゃんと。歌えるんだよ。

その歌の先に、きっと奇跡はあるから。

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