その鳥にとって、彼こそが空だった。

必要だったのは環境だったのかもしれない。「他の人」でも良かったのかもしれない。二人の出会いは決して運命ではなかったかもしれないけれど、世界を変える出会いだった。そうとしか思えないほどに、二人は完成されたつがいであったと、そう感じました。

魚が水を泳ぐように、鳥は空を飛ぶもので。けれど、歌鳥たちは自ら籠に入り暮らしている。皆が籠に入っていて尚、「籠の中の籠」に生きるちいさな鳥がハフリでした。そのハフリが、二重の籠を打ち破り空を求める姿はひどく一途で、懸命で、命懸けで――――だからこそ、ひとの心を打つのでしょう。鳥が生きる世界を「空」と呼ぶのなら、きっとソラトこそがハフリの空だった。

この物語は、とても小さな世界で起こった出来事を描きます。
もっと大きな、広い世界があることを示唆しながらも、彼らの物語は、ハフリの身に起こった出来事さえ、ちっぽけなものであったかもしれない、と思わされる「身近さ」があります。決して壮大ではない等身大の物語ゆえに、私達読者は彼らの、さながら友人のような、隣人のような、そんな気持ちで祈るのです。言祝ぎを贈るのです。

どうか二人に、祝福がありますように。

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