神を葬った近代日本人の罪

明治時代に行われた「神仏整理政策」を取り上げた極めて珍しい作品です。
この近代神道における最大の黒歴史は今や研究者以外知るところのないもので、そこをここまで掘り下げたのに脱帽します。
他の方も書いておられますが、稲八金天社が出て来たのは相当驚きました。
――そう、「神」は葬られたのです。明治新政府が奉った新たなる「神」によって。
その走狗として小祠を調査に来た主人公は、逆にその主によって「神」の本質を教えられることになります。
果たして彼女を拝んだのは幾千人、いや幾万人か。
舞とともに見せた幻想は、人の心の移り変わりを示し、「神」の形の移り変わりも示します。
それを潰したこともまたその移り変わりか。
否、移り変わりではあれど一方で罪が重すぎた。予言通りの体たらくとなり、新たに奉った「神」も消えて行くのです。
最後の場面、主人公の心に残る苦い気持ちや迷いもまた「神」の教え。かつて神を葬った彼にとって、今さらに教えられたことを知るとは何と皮肉なことでしょうか。
描写の豊かさに心ひかれながらも、沈思し噛みしめることの出来る作品です。

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