小説を作るとは、どういう事なのかを教わった作品。


 星の数は非常に迷った。

 まず、物語の組み方が非常に上手い。骨組みは、もはや完成されていると言っても過言では無いだろう。
 小説を書いている者として見れば、内容の面白さよりも構成の巧みさに惹かれるのだ。無駄に飾らず、万人受けするよう整えられた綺麗な組み方で、伝わりやすい小説だった。

 そして、専門的な知識を活用した設定の面白さ。
 元々作者の得意分野なのか、それともこの小説だけのために調べ上げたのかはわからないが、知識を手元に置いて自在に扱っているのが読み取れる。一時的な借り物では、こうはいかない。いかに心を込めて作られた作品であるかを思い知ることができる。
 専門的な知識を組み込んでいるにもかかわらず、実に理解しやすいのは、伝える力と情報を出すタイミングが上手いからだと見ている。

 内容も面白い。
 子供達による除霊というと、いささかありきたりではあるが、設定や小物を有効に使っているので新鮮味がある。
 難しすぎず堅くない謎を引っ張ることで、誰が読んでも興味を惹くようにできている所も評価したい。

 私が作品の中で一番気に入った所は、餓鬼界でのシーンである。
 全くもって個人的な理由なのだが、グロにもエロにも逃げず、正面から向き合ったまま、包み込むような救いで獄界を描く。
 短い描写ではあるが、強く印象に残っている。全体的にソフトなホラー作品で、このシーンを入れてきたのは、お見事と言うほか無い。


 では、星二つにした理由を述べたいと思う。
 単純に、数冊分のボリュームで読みたいからである。
 あまり長いと、ウェブでは読んでもらえない恐れがある。
 区切りのいい所まで書かれていないと、減点される恐れがある。
 上限がないとはいえ、規定されている文字数から大幅に離れていると印象が悪くなる恐れがある。
 投稿期限との駆け引きもあっただろう。
 色々考えた上での、この文章量なのだとは思う。
 いずれも理解はできるし、15万弱の文字の中に小説に必要とされるもののほとんどを詰め込んだ技量は素晴らしいと思う。
 コンテスト作品として正しい選択をしたのだろう。
 それらを踏まえてなお、私はもっと長い作品として読みたかったと思うのだ。
 これだけ腕のある作者なら、長編も書けるだろうし、長編にも耐えられる作品だと思う。
 それだけの理由で星は二つ。
 身勝手な理由で申し訳ない。

 上手な作品でした。

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