トイレ物語で有名な作者、雹月あさみ様が執筆された現代ファンタジー作品です。
女子高生の主人公が幽霊退治に巻き込まれる感じで物語は進行します。
道具の名称や世界観の設定がしっかりしている上に、それを説明する文章が読みやすい。スルリと頭に入ってくるのでストレスなく読み進める事が出来るでしょう。
更に人間ドラマの面白さも合わさり、夢中で読めてしまう作品でした。
伏線回収というか、過去のエピソードの出来事が絡んでくる構成は読んでいて快感を覚えます。
怪しい言動や行動の裏に、確かな意味が用意されている事に気付いた時の面白さはクセになりそうでした。
登場人物の魅力も忘れはいけません。一人一人のキャラクターが本当によく出来ていて、物語を進行を一層面白くさせます。
突飛な性格を持つ人物ではなく、身近にいそうな人物像が作者様の巧みな技により魅力的に仕上がっていました。
日常生活から非日常な世界へ誘われる雰囲気がとても自然です。現代感あるリアリティと幽霊というファンタジックな要素が違和感なく融合した書き方。
作者様の文章力に惚れ惚れしてしまいました。
ストーリー展開もアッと驚くこと間違いなしの構成で、最後までドキドキと楽しめる作品です。
私にとって超一級品の作品でしたので、是非読んでみて下さい。
女子高生が三人組が時には時には霊と心を通わせて成仏させ、時には除霊アイテムを使って力づくで霊を来世へと送る青春時代の友情と冒険を描いた物語です。
ジャンルとしてはホラーですが、それほどじわじわくるような怖さは無く、主人公達が霊や友人達との向き合い方に迷い、そして決断する青春ストーリーとしての側面が強いため、怖い話が苦手な人でもわりと大丈夫かと思われます。
また、主人公が用いる除霊アイテムが霊を成仏させるでも消滅させるでもなく、「餓鬼界」に強制転送するというあまり見ない設定なのも興味深いところです。
来世には天国とかもっとマシなところもあるようなのに、どんな霊でも閻魔大王の審判を受けるとかでもなく餓鬼界なんてろくでもないところに無理矢理送り込む鬼畜仕様で、自分がさまよえる霊だったら絶対こんなの使われたくないわー、某漫画の斬魄刀で斬られた方がまだマシだわーって感じなのですが、だからこそできれば使わずに済ませたいという主人公の葛藤が生まれ、話に深みを与えているように思われました。
終盤では、通常の人間霊ではなく、現世を滅ぼしかねない餓鬼界の大物(つまり餓鬼大将ですね←いや、それは何か違う)と対決する展開になっていきます。個人的には、このラスボスにはもう少し手強くあって欲しかったかなと思わないでもありません。
不思議なイケメンの先生から主人公に託されたのは、奇妙な名前と不思議な機能……中を覗くと幽霊が見え、シャッターを押せば強制的にその幽霊を「転生」させる力を持つカメラのような機械。一緒に真実を知ってしまった友人2人と共に、街に佇む様々な幽霊たちと時に触れ合い、時に語り合う彼女たち。だが、次第に3人は現世も来世も混乱に陥れる戦いに容赦なく巻き込まれる事となり……。
個性豊かな主役の3人、温和ながらも謎を秘めた先生を始め、数々の個性豊かな登場人物が、まるでパズルの欠片のように物語を作り出していく……読んでいるうちに明かされる意外な真実、予想外の顛末、そしてどんな事があっても友を信じる心が、一気に読者を作品の中に引き込んでいきます。幽霊も人間も単に怖いだけではなく、その裏に様々なドラマを秘めているのもまた魅力かもしれません。
普通は見えない存在に、主人公たちはどう目を向けるのか……少し怖く不思議で恐ろしく、でもどこか爽やかな冒険譚です。
女子高生3人組による幽霊退治。最初はオムニバス形式で進んでいくのかなと思っていましたが、それがうまいこと、どんどん大きな重大な事件になってゆき、盛り上がっていきます。
長さ的に、ちょうど単行本一冊を読み切った満足感。一冊の本としてのバランスが、すごくいいと感じました。というか、内容的にも、このまま出版されていたっておかしくないレベル。
設定も複雑すぎないし、文章は読みやすいし、何より、普通に(←これは誉め言葉)面白い。ホラー部門にエントリーしていますが、ホラーというよりも、オカルトをテーマにした一般小説というくくりだと思います。怖がらせることを主体とした小説ではありませんから。これも、もちろん良い意味で。
星の数は非常に迷った。
まず、物語の組み方が非常に上手い。骨組みは、もはや完成されていると言っても過言では無いだろう。
小説を書いている者として見れば、内容の面白さよりも構成の巧みさに惹かれるのだ。無駄に飾らず、万人受けするよう整えられた綺麗な組み方で、伝わりやすい小説だった。
そして、専門的な知識を活用した設定の面白さ。
元々作者の得意分野なのか、それともこの小説だけのために調べ上げたのかはわからないが、知識を手元に置いて自在に扱っているのが読み取れる。一時的な借り物では、こうはいかない。いかに心を込めて作られた作品であるかを思い知ることができる。
専門的な知識を組み込んでいるにもかかわらず、実に理解しやすいのは、伝える力と情報を出すタイミングが上手いからだと見ている。
内容も面白い。
子供達による除霊というと、いささかありきたりではあるが、設定や小物を有効に使っているので新鮮味がある。
難しすぎず堅くない謎を引っ張ることで、誰が読んでも興味を惹くようにできている所も評価したい。
私が作品の中で一番気に入った所は、餓鬼界でのシーンである。
全くもって個人的な理由なのだが、グロにもエロにも逃げず、正面から向き合ったまま、包み込むような救いで獄界を描く。
短い描写ではあるが、強く印象に残っている。全体的にソフトなホラー作品で、このシーンを入れてきたのは、お見事と言うほか無い。
では、星二つにした理由を述べたいと思う。
単純に、数冊分のボリュームで読みたいからである。
あまり長いと、ウェブでは読んでもらえない恐れがある。
区切りのいい所まで書かれていないと、減点される恐れがある。
上限がないとはいえ、規定されている文字数から大幅に離れていると印象が悪くなる恐れがある。
投稿期限との駆け引きもあっただろう。
色々考えた上での、この文章量なのだとは思う。
いずれも理解はできるし、15万弱の文字の中に小説に必要とされるもののほとんどを詰め込んだ技量は素晴らしいと思う。
コンテスト作品として正しい選択をしたのだろう。
それらを踏まえてなお、私はもっと長い作品として読みたかったと思うのだ。
これだけ腕のある作者なら、長編も書けるだろうし、長編にも耐えられる作品だと思う。
それだけの理由で星は二つ。
身勝手な理由で申し訳ない。
上手な作品でした。
謎の新任教師・兎我野を手伝い、幽霊と対峙する事になった恵子たち。胡散臭い教師の素性を調べつつ、幽霊を”死後の世界”へと送ることを繰り返す内に、大変な事件へと巻き込まれていく。
兎我野の素性や、幽霊の噂についてなど、足を使って調査するシーンはミステリものにも通ずるところも。
何より登場人物たちが記号的ではなく良い意味で個性豊かで好感が持てるため、幽霊との対峙だけでなく日常シーンも楽しめて、作品に惹き込まれます。
練り込まれた設定、惠子たちはもちろん幽霊も含めて丁寧な人物描写、さりげなく張られていた伏線、そして後半の畳みかけるような怒涛の展開。
話数自体は少ないですが1話当たりの字数、そして内容の濃さも充足していて、がっつりと読みたい人にお勧めです。是非とも紙で読みたい作品。
ちなみに、私は奈津美ちゃんが好みです。