月夜にこぼれる、梅の花

◆あらすじ◆
　雅やかで、けれど仄暗さをその輝きの裏に隠した平安時代。今は亡き先の帝の内親王、都子は恋というものを知らなかった。
　それがどれほど心を焦がし、熱くさせるかを――

　先帝は大層目鼻立ちの整った雅男で、若かりし頃より流した恋の浮名は数知れず。そんな中でも、一際寵愛したのが都子の母だった。
　母はとても心根の優しい美しいひとだったけれど、身分が低く強力な後ろ盾もなかったため中宮にはなれなかった。更衣という立場に見合わぬ際立った寵愛――そこより生じた周囲との軋轢を先帝が知ったのは、彼女が儚くなった後の事。
　愛する女を守りきれなかった後悔、ひとり残された幼い娘への憐憫の情。父母の血を繋ぎ、きっと美しく育つだろう愛娘の行く末が心配で堪らなかった先帝は、都子をゆくゆくは次代の斎宮として…続きを読む