概要
その土地では、いつも雨が降っていた。
その土地では、いつも雨が降っていた。月の半分は、音を立てて大粒の雨が降りしきり、残りの半分は小雨か、よくて薄曇り。晴れ間など、せいぜい月に一度か二度というところだった。そのような土地にも人が暮らしていると聞いて、迷わず向かっていったのは、好奇心にこの背を押されたからだ。
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- ★★★ Excellent!!!旅情と郷愁は、雨の音と死の気配にかたどられて語られる
旅人の「私」が興を惹かれて訪れたのは、雨の国だった。
人々は岩肌の崖に穿たれた洞窟に住み、滅多に外に出ない。
雨に閉ざされて暮らし、年に数度の晴れ間は祝福の時である。
食は採取と保存に依るため貧しく、人々は痩せこけている。
厳しい環境に暮らしながら、人々はなぜその土地を離れないのか。
残酷な風習によって生存の調整をおこなわなければならないのに、
誰もそれに異を唱えもせず、改革を起こそうともしない。
異邦人の目に、彼らの暮らしぶりは不思議で悲しく映る。
架空の土地を舞台にした旅行記風の物語。
会話らしき会話のないひっそりとした文章が、
洞窟の中で声を潜めて暮らす風土を描き出す。
不思議なリ…続きを読む