終わった世界の黒と白


 全ての色をまぜこぜにすると黒になります。色を全て抜いてしまえば白が残ります。
 沢山の生き物がいるからこそ、世界はカラフルに彩られているのです。



 煌めくような色とりどりの、有色の世界は朽ちてしまいました。
 残ったのは、漂白された一面雪色の世界です。
 そんな世界に取り残されたら、わたしは何を思うでしょう。

 驚いて何もできなくなりそうです。
 悲しくて泣き崩れてしまいそうです。
 寂しくて消えてしまうかもしれません。

 オートドールと呼ばれる彼女は、その時意識が生まれてなかったそうです。
 それは良いことだったのかもしれませんね。
 人間であるわたしはそう思いました。



 出会ったのは偶然でしょうか。
 冬眠していた眠り姫。白い肌とブロンドの髪を持つ少女。
 二人が出会い、物語は静かに幕を開けます。

 終わった世界を二人で生きるのです。
 最低限の物だけを備えた場所から、少しずつ、ゆっくりと世界に色を増やしていく。
 白紙から世界を紡ぎ出した神様も、こんな作業をしていたのかもしれませんね。一人で? いえ、きっと誰かが側にいたことでしょう。一人きりで絵筆を流すには、世界は少し広すぎますから。


 どうして、世界は眩しい雪に包まれてしまったのでしょうか。
 オートドールの彼女だけを、世界に取り残した理由は何なのでしょう。
 二人を出会わせた運命は、いったい彼女たちに何を成させたいのでしょうね。
 雪が降りしきるだけの単純な世界なのに、積もった謎はどこまでも深みを増していきます。
 謎をとかしてしまいたい。

 いえ。

 このまま。綺麗な結晶のままで、眺めていたい――

 相、反する想い。
 ずいぶん贅沢な悩みだと、自覚しています。



 焦ることなく、急ぐこともなく。
 ゆっくり時間を進めて欲しいと、願うばかりです。
 

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