愛しているからこそ、「Yes」とは言えない。……でも、六年は長い(笑)

いい加減な王子に振り回される、口にできない秘密を抱えた彼女。コメディタッチで描かれるお話は、とても面白かったです。お互い、言えない理由があって、(たぶん、王子の方にも)相思相愛なのに、言えない。その何とももどかしい感じが、読んでる方からするとたまりません。じれじれ万歳(笑)

相思相愛であるのに、結ばれない最大の理由は、彼女が罪なき罪人であるから。異教の民という理不尽な理由で、罪人となった彼女は、生きるために、過去を隠し通さなければならない。(という設定は実にシリアスなんだけど……)

ところが……自分の祖国を滅ぼした国の王子に、運命的に惚れられて、毎日「結婚してくれ」と迫られる日々、実に六年(長いっw)敵国の王子だ、もちろん、問答無用で「お断り」した。のに、彼は諦めてくれない。しかも、それが本気なのか、冗談なのか分からない不誠実なアプローチで。もう、なんていうか、ばりばり不幸な過去を背負っている上に、こんな男に翻弄されるとか、気の毒としか言いようがない(笑)で、六年もドタバタやっているうちに、情が湧いてきている様子で、完全に泥沼状態になっている。

察するに、王子も最初は本気ではなかったのだろう。あれで本気なのだとしたら、女の口説き方があまりに下手だ(苦笑)彼は、彼女が、秘密を打ち明けてもいいと思える程の信頼を勝ち取らなければ、この恋は成就しない。バカのふりをしなければならない理由が、もしあるのだとしても、女を六年もぬるま湯に浸からせて、ふやけさせた罪は重い。
だから、責任とって、彼女を必ず幸せにしてあげなさい(笑)

一つだけ気になったこと。構成的に、短編連作という手法なので、仕方がないのかなと思いますが、毎回かなりの行数を、彼女の不幸な過去の説明に費やしてしまっているので、続けて読むと「この話、前回も聞いた」という感じになるのですよね。しかも、全体的にはコメディなのに、そこの部分だけ、重たいお話で。そこの部分は少し端折ってもいいんじゃないのかな、と感じました。