青春で等身大の事件簿――ジャンピング・ジャックは僕かもしれない。

非常に秀逸なライトミステリー。

予備知識も、ミステリーのお約束を何一つ知らなくても、冒頭の数行から物語に入り込める等身大の物語。ミステリー初心者でも安心して飛び込んでほしい一作。

登場人物は色鮮やかに書き分けられており、主人公であり探偵役、そして語り部を担う少女・河原鮎。サッカー部のマネージャーであり、愛想のないワトソン役の敷島哲。他にもクラスメイトや警察官など、その全てが個性豊かに、そしてリアリティをもって描かれている。

主人公の鮎が同級生の転落事件を目撃したことを端に始まる数々のでき事は、全てが僕たちの身に起こったとしてもおかしくはない出来事ばかり。

連続転落死事件、送られてくるメールの謎、SNSの掲示板、ジャンピング・ジャック――数々の謎が少しずつ全体像を描き始める物語の後半、全ての読者が息を呑み、そして読む手を進められなくなるのは間違いないだろう。

個人的に素晴らしいと思ったのは、探偵役の主人公にもしっかりとドラマをつくり、家族――とりわけ兄との確執をえぐいぐらいに描いたところだ。かつて栄光の中にいた兄が、家に引き籠って鮎に当り散らすさまは、見ていて胸が苦しくなった。

そしてワトソン役を必要とした物語のラストも秀逸だった。二人であるということの意味を――『ホームズ』と『ワトソン』の関係を限りなく甘酸っぱく描いてくれた本作は、ミステリーを読んだことがないという方にお勧めできる最高の一作だろう。


キャッチコピーの「あいつを殺してジャンピング・ジャック」の意味を知った時――

必ずあなたは戦慄する!

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