特殊で残酷な世界観、猫耳という普通なら誰もが和んでしまうようなキーワードが「死」と直結しているという倒錯感がとても甘美です。そんな中で彩られる少年少女の思いの交錯が細やかに表現されていて、キャンバスの端から端まで丁寧に一筆一筆描かれているような絵画を見たような心地になりました。
ハードなSF設定を下敷きにしながらも、それを覆い込み、包み込んでしまうよう描かれる世界観。音と香りを感じさせてくれる豊かな筆致。
これはキズつきやすいすべての人へのエールであり、知らず知らずに人を傷つけてしまうひとへのメッセージだ。優しさを強さに変えることの本質を、幻想的なタッチで描いている。読み終わったときにあなたは思うだろう。大事なひとを抱きしめたいと。そしてこうも思うだろう。猫耳ケーキが食べたいと。
繊細な描写は頭の中で繰り広げる世界に、より愛着を持てるように優しく丁寧に誘ってくれます。この物語は独特の世界観が素晴らしいだけではなく、登場人物の気持ちを大事に描いてあることです。
世間一般では一般女性も気軽に身に着ける『ネコミミ』。 市民権を獲得してだいぶたつ萌えの代表格です。 タイトルこそ一見ほのぼのした印象ですが、作品世界では遺伝情報を書き換えられ、世界を死で満たす特殊な病として設定されています。 かなり際立った世界観や設定のもと心を通わす少年少女の描写が目を引きます。 各話のサブタイトルにもこだわり抜いた、本物の『ネコミミディストピア』作品。
主人公ソウタ達はキャットイヤーウイルスの感染者である故か、猫とも人ともつかないどこか曖昧な存在。そんな彼らの繊細な感情の機敏が、美しい島の景色や暖かな食事のシーンとともに丁寧に描き出されている。そしてただ愛らしく、甘いだけの物語ではない。タグにディストピアとある通り、閉鎖された環境やケットシーに対する差別、旧文明の存在が物語にほの暗い影を落としている。十三人の子供達の謎もきになるところ。こんなに深く切ないネコミミの物語は初めてです。
悲しい想い出と背負ってしまった運命に心を縛られてしまった少年と少女が、出会い、交わり、躓き、すれ違い、そしてお互いに相手の大切さに気付く物語。基本を押さえたボーイミーツガールものですが、ネコミミという特殊な設定のもと、登場人物たちの心の機微を繊細に捉え、視覚と聴覚に訴える描写を多用して、読者の感情に訴えてきます。多くの人に安心してオススメできる作品ですね。
ウイルスによってネコミミが生えてしまったソウタとハル。その鋭い聴覚は、微弱な心音までも捉えてしまう。差別や親しい人の死のトラウマに悩みながらも鎮魂祭への出場を決意するハル。ソウタはハルを抱き上げ、会場へ向けて跳ぶのであった。「あなたの音で、これからも歌をうたいたいの。駄目、かな」ハルの歌が、二人の世界を変える。