読んで、想像する楽しさ。世界観に浸って、見届けたい物語。

  • ★★★ Excellent!!!

やっと、読み終えることができました。

文章を読むのが得意でない自分にはやや難解で、読み進めるのにとても時間がかかってしまったように思う。
けれど読み心地は決して堅苦しくなく。ただひたすら丁寧に、その緻密な世界観と登場人物たちの繊細な心情が描かれていて惹き込まれた。

衣装や食べ物、生物や鉱物に関するくどいまでの描写は、徹底して作り込まれた世界を読者に鮮やかに見せつけ、そこに生きる人々の生活をリアルに感じさせてくれる。

同時に、描かれるたくさんの登場人物と、それぞれの思い。多くの人物にスポットを当てながら、それでもきちんと主人公達が主軸に置かれているのがわかる。
(当然のことなのだけど、登場人物が増えるとブレがちな部分だと個人的に思っている)


斜陽の帝都で出会った少女と青年が惹かれ合い、思いを交わし、そして互いがかけがえのない者と知りながら、時代の大きなうねりの中で分かたれることになる。
逃れることの出来ない血統に因る、自らの責務を全うしようとする青年。
共に在る為に自ら力をつけ、混乱の中から愛しい人をつかみとる少女。

そう、この物語におけるヒーローは、紛れもなく主人公である少女ラナ。
穏やかな日常、偶然でありながら必然的な出会い、そして何もわからぬまま巻き込まれ、流された先、新たな土地での新生活。
けれど奪われたことに腐ることなく努め、着実に生き抜く力を身につけ、秘された過去に近づき、やがて大切なものを自らの手でつかみ取る。

何も知らなかった少女が困難の中で成長していく様は本当に眩しくて、愛おしい。
勿論、救われるカタチとなる青年もまた、最後にはとても素敵に成長してくれていて、あぁ、よかったなぁ、と。

途中、やるせなさを感じさせられる部分もあるが、とても爽やかな気持ちで読み終えることができた。
じっくりゆっくり、世界観に浸りながら物語を楽しみたい方は、是非。



作者さま、素敵な物語をありがとうございました!
(乱文失礼いたします)

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